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俳句でおしゃべり-都市ー

「都市」での活動や俳句に繋がる文章や会員のエッセイ等の語り場にしていきたいと思います。

「掌の小説」作家の良さん登場です。 ブレリオの写真も良さん提供です。

Posted by レオフェイ on   0  0

                ブレリオが飛ぶ

                                   城中良

                        


「おーい、フライトだ。すぐ出てこい」朝早く飛行機仲間からの電話である。
飛行機と言ってもラジコン飛行機。東京に出てきて何年かたち、ひょんな事から
ラジコン飛行機作りの人と知り合いになり、飛行機作りのグループに誘いこまれたのです。

昔よく船や飛行機を作っていたので、今度は本格的に設計図と首っ引きで
作りだしたのです。
ラジコン飛行機は模型とは言い、本物の縮小版で、バルサからきりだし、
設計図を見ながら、本物のスケールの何分の1かの機体を作るのです。

飛行機仲間のなかに、驚いたことに、1909年ドーバー海峡を横断した、
ブレリオXⅠの制作に挑戦した奴がいたのである。
二年以上前から、設計図を書き出し、何時完成するのやらと思っていたら、
忘れた頃に突然電話が来たのです。

DSCF4112.jpg

その日の彼は驚いたことに、日航の整備士と同じ帽子を被り、
整備服を着て、すっかり航空マンになりきっているのです。
車からそっとブレリオの機体を、宝物をとりだすように
地上に置いたのです。

我々は無言で息を呑んだ。けちのつけようのない出来栄えである。
彼は我々を機体に近づけないのです。
近づくと犬のように唸るのです。おそらく触ったら嚙みついたであろう。

機体は驚くべき正確さ、細部まで神経がゆきとどいており、
非の打ちどころがない、素晴らしい出来栄えです。
翼は美しい絹張り、胴体のむき出しの骨組は漆で処理され、
パイロットのフィギュアも念入りに作られ、操縦士用の帽子を被り、
ゴーグルをかけ、白いスカーフを巻いている。
このブレリオが無事離陸し、空を飛ぶことができるか、
我々は固唾をのんで機体を見つめた。

彼は鼻をうごめかしながら、おもむろにエンジンのスタータを
とりだし、始動させ、プロポのエンジンレバーを引くと、白い煙を吐き、
プロペラが回転しだした、いよいよ離陸だ。
我々はかたずを呑んで見守る、ブレリオがゆっくりと動きだした、と
思う間に滑るように地上を走り、ふわりと空中に浮いたのです。

                       DSCF3943.jpg
   
彼は大きく「テイクオフ」と叫び、ブレリオをゆっくりと右に回す、
飛び方も、クラッシク飛行機らしく、ゆるやかに、頭上を旋回し、
そのたびにフィギュアのパイロットの白いスカーフがゆれる。
素晴らしいフライトだ。
ブレリオXⅠが今飛んでいる、信じられない光景だ、我々飛行機仲間は、
無言で心から彼に賞賛を送った。

やがてブレリオは着陸態勢をとり無事地上にすべるように着陸した。
彼は着陸するや急いでブレリオに走り寄り、そっと抱きあげ急いで
車の中に収納し、機体に触られたら大変と、挨拶もそこそこに、
エンジンをかけ、急いで帰ったのです。

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