FC2ブログ

俳句でおしゃべり-都市ー

〜「都市」での活動や俳句に繋がる文章や会員のエッセイ等の語り場にしていきたいと思います。〜
ざぼん句会で実践している、LINE句会の紹介です。 2020.04.03
久しぶりに良さんのショートショートです。 2020.03.09
暖冬の2月の吟行です!! 2020.02.13
イベント部より 2020.01.27
今年の新年会は、早々と5日に開催されました。 2020.01.26

久しぶりに良さんのショートショートです。

       白い花                 城中良
                                       雲


遠くの雲がゆっくり空をゆく、そんな日だった。
ゆるやかな上りを道なりに行けば牧場につく、
牧場と言っても簡単な木の柵で囲はれ、人懐なつこい牛一頭、
山羊が二匹しかいない名ばかりの牧場。
そこの近くの野原に行く予定だったのです。

なのに、みちの途中に細い暗がりのみちがあり、行ったこともないのに、
その細いみちに入ってしまったのです。みちは暗く、獣みちで、
左右の土の上には名の知れぬ潅木がうっそうと覆い、じめじめとした感じ
なのです。引きかえそうとしたが、行けばどこかに出るだろうと、
高をくくっていたのです。しかし、行けどもゆけども、みちは暗く、
明るく開けてこないのです。

                       けものみち


これは危険なみちに入ったと、引き返そうとしたとき、
暗がりの先に丸く明るい穴のような所が見えてきたのです。
近づいてのぞくと、小さな坂があり、その先に畑のようなところが
広がっているのです。助かった。ここから野原の方にいけるかもしれいと、
坂をすべり下りたのです。回りを低い山にかこまれ、なだらかな畑があり、
ちょっとした狭い台地なのです。人の姿はなく、畑の先には小さな白い花が
一面にひろがっています。暗い所から異次元の明るい空間に出てきたのです。

              ana.jpg


白い花、いったい何の花だろう、畑の細い畦みちを花の方に近づく、
今頃群落になって咲く四十センチ位の白い花とはなんだろう、
手を伸ばすと、後ろからやわらかな女の声がしたのです。
とがめるでもなく、詰問されるでもなく、ただやさしい声がしたのです。

                                                     ぺんぺん群生


うしろを見ると、野良着姿の、少し白髪の品の良い女性が
ほほえみながら立っていたのです。道に迷ってしまった事、
そして、この白い花はなんですかと、尋ねたのです。これは薺です。と、言う。
薺、あのぺんぺん草、こんな群落になって咲くのを見たことがない。
手にとって良くみればやっぱり薺、ぺんぺん草だ。

                     ぺんぺん草


白い花に立つ女性はここに生活しているのか、眩しいものを見るように、
黙っていると、お茶を飲んでいきなさい、と言う。
                                                    部屋


落ち着いて回りをみると台地の端に小さな平屋がある、
ここに生活しているのか。女性の後ろに黙ってついて行くと、
あけ放った部屋は小奇麗に整理されており、縁側に座りなさいと言う。
座ったところから白い花が一望に見える。

                                                       rouka.jpg


お茶が運ばれ、ガラスの器にステック状の赤、青、白の野菜が並んでいる。
お茶を一口飲む、おや、と言う顔を見て、ウコン茶です、と言う。
生姜のかすかな香り、ローズマリーの味、ただのウコン茶ではない。
黙って白い花を見ていると、野菜も食べろと言う。
ウーン、これは色々なスパイスに漬けこんだピクルスだ。
品の良い女性にお茶を出してもらい、花を見ながら野菜を齧る。
あの暗がりを抜け、一体どこに来てしまったのだろう。
牧場の方に行きたいといったら、どうも全然違う所にきてしまったらしい。

この家の横にあるみちをしばらく行けば旧街道にでますから、
と事もなげに言う。
お茶、お替りをしますか、と言われたが、ありがとうございます。
これから帰ります。と言って、白い花を見ながら立ち上がる。
やさしくほほえみ、また、いらして下さい。と言われる、道を下りながら、
一体どこに来てしまったのだろう。
暗い下りのみちを不思議な感覚につつまれながらあるく、
かなりの時間を歩き旧街道に出て家に帰りついたのです。

                  ?道


つぎの年、摩訶不思議な薺の大群落をみたくて、細いみちを行ったが
全然違うところに出てしまい、明るい穴のような空間も見つからない。
帰ってきた旧街道の道もなぜかわからない。
まるで狐につままれるとはこんな事かと思い、探すが、
白い花のある場所見つからない。見つからないから仕方が無いと
自分に言い聞かせて家に帰ったのです。

             見つからない

スポンサーサイト