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今年は「都市」のメンバーの今までの句の中で、お気に入りの一句を紹介するコーナーを設けました。

2013/ 01/ 08
                 
       妄想旅行
             
            栗山 心

  
    
      姫とよびマダムとよびて冬薔薇
                            
                                山城透(都市2010.4月号)

「姫~」と呼び掛けられたのは、
若き日に、当時ハマっていたゲイバー。
野太い声のママさんは、私がコートを脱いだ瞬間、
こちらの性別を確認したのだろう。
ここでの私は部外者、お客様扱いの「姫」であった。


           マダムと花屋

「マダ~ム」と呼ばれたのは、22歳、初めてのフランス。
パリ7区の「ミシェル・ショーダン」は、
一粒何百円かのチョコレートを手袋を嵌めた店員が、
宝石を扱うように売るショコラティエ(チョコレート専門店)。
明らかにマダムではないアジアの小娘に、
少しの皮肉と客としての敬意を込めた「マダム」。

掲句から浮かんだ、私の思い出。普段忘れていたことが、
俳句を読んだ瞬間、突然甦ることがあるが、
この句はまさにその体験をさせてくれた。

もしかしたら、
「薔薇にはマダムやプリンセスの名前がついている」
位の意味なのかもしれない。しかし、私の追憶は
やがて妄想に変わり、留まるところを知らない。
冬薔薇と自分のいる場面が、ランダムに浮かびあがる。

             万年筆


作者の山城透さんの句は、いつも極端に情報が少なく、
現実なのかフィクションなのかも定かではない。
そんな透さんの句を前にして、私は過去に未来に、
更には自分の経験すら離れて、自由に俳句の世界に
遊びに出掛ける。そして楽しい小旅行をしたような気分で、
元の世界に戻ってくるのだった。

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