「都市」5周年記念での、特選の方々の自句自解です。
2013年03月20日 公開
鳩の鼻膨れて春の来たりけり
秋澤 夏斗
出先での打合せ時間が一時間遅れたため、
コンビニでサンドイッチを買って
亀戸の小さな公園で過ごすことにしました。
この日はとても暖かく一月とは思えない陽気です。
ベンチに腰かけていると沢山の鳩が集まってきます。
少しだけパンをちぎって与え鳩の様子を
うかがっていましたが、鳩のくちばしの先が
ハート型をして少し膨らんでいるのに気付きました。
ハート型の鳩のくちばしの先を句にしよう
といろいろ考えました。
これは鳩の鼻でよいのだろうか?
ハート型にこだわるとうまく出来ません。
そこで春の近いことを鳩に託して詠むことにしました。

鳩の鼻膨れて春の来たりけり
公園の隣が小さな洋裁店で二階の窓から
マネキンが覗いており、真っ赤な下着が
とても眼につきましたのでもう一句作りました。
マヌカンの小さき下着や春隣
仕事の時間変更のおかげで記念俳句大会に
このときの二句を投句することができました。
終点の先の枕木月冴ゆる
北杜 青
俳句を再開したことを妻と娘に言えずにいる私は、
こっそり句会に参加するのがやっとの状況で、
なかなか俳句に取り組む時間を持てずにいます。
年末も五周年記念大会の投句期限が迫るなか、切羽詰まった私は、
30日に妻の実家に帰省する予定を急な仕事が入ったと嘘をついて、
大晦日にひとり遅れて帰ることを許してもらいました。
卑怯な手段で手に入れた天国のような1日、私は朝から炬燵のなかで
ひたすら秋桜子と誓子の句を読み続けました
素晴らしい俳句の数々からたっぷり栄養をもらった自分の頭が
俳句脳になったころを見計らって、ひとり席題をします。
題は漢字1文字、年末ということで「終」という題で作った句を
今回中西先生に選んでいただきました。
以前、丹頂鶴を見に釧路を訪ねたときの情景がベースになっていますが、
決して実景の句ではありません。
俳句のことを早く妻子に告白するか、発覚しないように雑誌の郵送先を
事務所に変更するか悩んでいます。

福耳を隠してしまふ冬帽子
高木光香
向い側の席のご婦人が、毛糸の帽子を被って
ゆっくりと立ち上がった。
雰囲気も背格好もMさんによく似ている。
Mさんというのは、自宅近所の年上の友人である。
冬になるとワインレッドのモヘアの帽子をひょいと被り、
耳まですっぽりと覆うのが常だった。

私はMさんの福耳を羨ましくも思い、
帽子で隠れるのは残念とその度に思っていた。
見知らぬご婦人に触発され、すーっと句ができた。
「テニスコートの辛夷が咲いていますよ」
「2丁目の公園の桐の花が見頃ですよ」等、
丁寧に声をかけて貰い案内しても頂いた。
一緒にカタクリの花を見に行った事もあった。
おっとりと喋るわりには何処へで
も気軽に出かける行動力があった。
そのMさんが亡くなってから4年になる。
生前お世話になったのに何のお返しもできなかった。
申し訳ないと思っていた。
が今回句を作り文を書くことによって、
Mさんと一緒に出かけた色々な場面を思い出した。
懐かしく、久しぶりにMさんに会ったような気がした。
時々思い出すこと、これこそが何よりの供養かなと思えた。
秋澤 夏斗
出先での打合せ時間が一時間遅れたため、
コンビニでサンドイッチを買って
亀戸の小さな公園で過ごすことにしました。
この日はとても暖かく一月とは思えない陽気です。
ベンチに腰かけていると沢山の鳩が集まってきます。
少しだけパンをちぎって与え鳩の様子を
うかがっていましたが、鳩のくちばしの先が
ハート型をして少し膨らんでいるのに気付きました。
ハート型の鳩のくちばしの先を句にしよう
といろいろ考えました。
これは鳩の鼻でよいのだろうか?
ハート型にこだわるとうまく出来ません。
そこで春の近いことを鳩に託して詠むことにしました。

鳩の鼻膨れて春の来たりけり
公園の隣が小さな洋裁店で二階の窓から
マネキンが覗いており、真っ赤な下着が
とても眼につきましたのでもう一句作りました。
マヌカンの小さき下着や春隣
仕事の時間変更のおかげで記念俳句大会に
このときの二句を投句することができました。
終点の先の枕木月冴ゆる
北杜 青
俳句を再開したことを妻と娘に言えずにいる私は、
こっそり句会に参加するのがやっとの状況で、
なかなか俳句に取り組む時間を持てずにいます。
年末も五周年記念大会の投句期限が迫るなか、切羽詰まった私は、
30日に妻の実家に帰省する予定を急な仕事が入ったと嘘をついて、
大晦日にひとり遅れて帰ることを許してもらいました。
卑怯な手段で手に入れた天国のような1日、私は朝から炬燵のなかで
ひたすら秋桜子と誓子の句を読み続けました
素晴らしい俳句の数々からたっぷり栄養をもらった自分の頭が
俳句脳になったころを見計らって、ひとり席題をします。
題は漢字1文字、年末ということで「終」という題で作った句を
今回中西先生に選んでいただきました。
以前、丹頂鶴を見に釧路を訪ねたときの情景がベースになっていますが、
決して実景の句ではありません。
俳句のことを早く妻子に告白するか、発覚しないように雑誌の郵送先を
事務所に変更するか悩んでいます。

福耳を隠してしまふ冬帽子
高木光香
向い側の席のご婦人が、毛糸の帽子を被って
ゆっくりと立ち上がった。
雰囲気も背格好もMさんによく似ている。
Mさんというのは、自宅近所の年上の友人である。
冬になるとワインレッドのモヘアの帽子をひょいと被り、
耳まですっぽりと覆うのが常だった。

私はMさんの福耳を羨ましくも思い、
帽子で隠れるのは残念とその度に思っていた。
見知らぬご婦人に触発され、すーっと句ができた。
「テニスコートの辛夷が咲いていますよ」
「2丁目の公園の桐の花が見頃ですよ」等、
丁寧に声をかけて貰い案内しても頂いた。
一緒にカタクリの花を見に行った事もあった。
おっとりと喋るわりには何処へで
も気軽に出かける行動力があった。
そのMさんが亡くなってから4年になる。
生前お世話になったのに何のお返しもできなかった。
申し訳ないと思っていた。
が今回句を作り文を書くことによって、
Mさんと一緒に出かけた色々な場面を思い出した。
懐かしく、久しぶりにMさんに会ったような気がした。
時々思い出すこと、これこそが何よりの供養かなと思えた。
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