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「都市」の俳句鑑賞リレーの4 回目です!

2013/ 04/ 01
                 
      万緑
                 星野佐紀


    万緑や若き声明堂を満つ   

               盛田恵未(2008年10月号巻頭句)
            


一読して「あの寺のあそこだ!」と、叫びたくなる句だ。

近鉄大阪線長谷駅より初瀬川沿いの初瀬街道を徒歩20分弱。
真言宗豊山派総本山長谷寺は、小初瀬山の中腹、
断崖絶壁に張り出す舞台を持つ懸造り。
本堂へは、399段の登廊。天井からは等間隔に灯籠が吊るされ、
両側には、かの有名な牡丹、牡丹、牡丹が続く。
灯籠を見上げながら1段1段登る作者に、
声明が大きく聞こえてくる。

本堂内には、髭の剃りあとも初々しい横顔が並ぶ。
若い僧達の緊張した顔とその口から発せられる声明に、
作者はきっと「はっ!」としたに違いない。
勤行が行われていたのだ。
暫くは、辺りに響き渡る声明に聞き入る作者。

そして、声明を背に本堂の舞台に出てみる。
清水寺の舞台程広くはないが、思わず歓声を挙げたくなるほどの眺め。
眼下の起伏を生かした境内の佇まいが、一目瞭然だ。
緑滴る中に、仁王門、登廊、五重塔等の屋根が、黒々と覘く。
その先は、通ってきた門前町へと続く。

すばらしいのは、遥か正面の山並みである。
明るく瑞々しい緑が、帯のように横たわる。
愛宕山、岳山、与喜山などだ。
舞台からの視界は、正に“万緑”そのものである。

           IMG_4981.jpg
           

若々しい張りのある堂々とした声明は、まだ続いている。
それを耳にしながら、目の当たりにする“緑の世界”。
作者の感動が伝わってくる。

西下の折、長谷寺を訪ねる度に、盛田恵未氏のこの句が口をつく。
今年は、初瀬参りが出来るだろうか。
ぜひ、実現させたいものだ。
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