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有名な俳人たちの一句鑑賞の第二弾は久女のファンの満理さんです!

2013/ 04/ 17
                 
   久女の一句
                  大木 満里



  秋来ぬとサファイア色の小鰺買ふ     
                      杉田久女
                        


サファイア色の小鰺が浮き立つような、
色彩の美しい透明感あふれる句である。
久女は絵心もあったと云われる。

「足袋つぐやノラともならず教師妻」
「戯曲読む冬夜の食器浸けしまゝ」などの句で
当時の女性の句としては主観の強い
自我を表出している久女であるが、
このような視覚的に美しい絵画のような句も
つくっている。

私はある時まで、確かに美しい句ではあるが、
上五の「秋来ぬと」下五の「小鰺」(夏)の季語の
取り合わせが気になっていたことがある。      
「秋来ぬと」の上五が少々説明的ではないか、
と思ったからである。

しかしこの句は写生句である。
夏の気配はまだ残ってはいるものの、
秋の清澄さの漂う陽射しをうけながら、
店先に並べられた小鰺。久女の心をとらえたのは
小鰺の青く透明な色合いであった。
ものをよく見て細かい写生を大胆に描く。
それが「サファイア色」という大胆な表現であり、
久女の感性の鋭さのあらわれでもある。

           IMG_3880.jpg



「秋来ぬ」という古典的な表現にある象徴性と、
「小鰺買ふ」の具象性の取り合わせが、
「サファイア色」のより鮮やかな透明感を
うみだしている。

食卓に飾られた「小鰺」はさぞや
新鮮な味であっただろう。
久女の幸せそうな笑顔が見えてくるようである。


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