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俳句でおしゃべり-都市ー

「都市」での活動や俳句に繋がる文章や会員のエッセイ等の語り場にしていきたいと思います。

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2013-06-19 (Wed) 21:53

俳句の鑑賞が続きましたので、良さんのショートショートを!

    幻の魚、幻の島

                          城中 良


島と言うより岩礁にちかい小さな島に若者と二人であがり、
狙ってもなかなか釣れない、幻の魚といわれだした
石鯛をねらったのです。

海流の激しく流れるところで、流れは美しい蒼を幾重にも重ね、
蒼黒く、時折エメラルドグリーンの明るさが混じり、
黒潮の巨大な奔流は川のようにこの小さな島のまわりを
激流のようにながれる。この下にきっと石鯛はいる。

良い条件だと思う所なのに、1時間位たっても、
かすかな当たりもない。
この釣り、根競べみたいな所があり、最後の一投で、
来たりするから油断ならない。

昼食後も当たりがない。やることは全てやってみた、
だが、何の応答もないのである。

若者も釣れた様子がない。こんな条件の良い所にきて
少しの当たりもない。海は蒼く、引き込まれそうに、
深く、暗く、美しい海だ。

この浮かぶような小さな島、大きな波がきたらひとたまりもない、
恐ろしいところだ。午後から次第にうねりが高くなってきた
何か危うさを感じ、早仕舞いをし、仕掛けを畳んでいると、
若者も諦めたらしく、傍にすわる、暗い顔をした若者だと思った。

お互いに一言も口をひらかない。すると不意に
「明日もやるのか」と言ってきた。
「いや、これから東京に帰る」と言葉を返す。
そうしたら、急に喋りはじめ
「俺は明日もやる」と毅然と言い、
海流を見つめ、ぽつりと「かみさんと離婚したんだ」と言う。
まるで石鯛を釣り上げなきゃ、自己の再生はない、と言わんばかりだ。

まだ、島を降りる時間でもないのに迎えの船が
猛スピードで島に近づいてくる、いきなり船のマイクが
大声でとんでくる、

波が高い大至急、船に乗り移れ、
船頭が狂ったように叫ぶ。我々は、
道具をたたみ転げるように船に乗り移ると、
船は物凄い勢いで島からはなれる。
島からはなれて十五分位して、島の方を見ると、
島の姿はなく、島は幻のように海に消えている。
二人は無言で、島の消えた海を
呆然と眺める。

         IMG_8060.jpg


舵を握る船頭の顔は安堵と、安心で赤く紅潮している。
船頭の判断が遅れ、迎えの船がもう少し遅かったら、
あの青い海の底に沈んでしまうところだった。
港に向う船頭も若者も、三人とも一言も言葉を発しない、
二人は空ろに海を見ながら港に到着した、
三人とも無言で、船頭と若者は船宿へ、こちらは駅に向かったのです。

釣り師よ、お前に罪がないというなら聞くがよい
ここに泳ぐのは神の魚だ
ウォルトン
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最終更新日 : -0001-11-30

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