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「都市」の一句鑑賞リレーです。(七回)

2013/ 06/ 27
                 
       一句鑑賞

                        田中翔子
  
     
      
  二階への暗き階段雛の燭
                           丸山 桃



この句に出会ったのは昨年2月の中央句会の時で、
私は迷わず特選にいただきました。
それは以前に訪れたことのある足柄上郡開成町の
瀬戸屋敷の雛飾りを鮮やかに思い出させてくれたからです。

         IMG_0681.jpg
        

その地方の代々名主を務めた瀬戸家の古い屋敷の、
部屋という部屋に飾られた歴史ある雛人形と調度品、
天井からもたくさんの吊るし雛が下がり、
色彩も豪華なそれは見事な光景でした。

さらに屋敷の裏にまわるといくつかの蔵があり、
そこでも雛飾りを展示してあるので入ってみると、
屋敷の雰囲気とは違って、薄暗い土間の
ひんやりとした空気に包まれます。

大きな木の階段を登ると、江戸時代から伝わる
お雛様たちが厳かにひっそりと並んでいるのが
暗闇に慣れた目に入ってきます。
まるで長い刻を重ね私達を待っていたかのようです。

            IMG_1159.jpg


桃さんの俳句はこの時の体験を、
しっとりとした空気感と共に
よみがえらせてくれました。
自分でも俳句にしたいと頑張ったのですが
うまくいかず抽斗の奥にしまったまま忘れていたのです。

おそらく作者の思いとはかけ離れた勝手な
解釈かもしれませんが、この俳句のお蔭で
あの時の感動に再び浸ることができました。

その後の句会において私はたびたび桃さんの俳句を
選句していることに気付きました。
欠席投句を続けていらして、一度もお目にかかったことが
ないので、選句した俳句の作者が桃さんだと知る度に、
どんな方なのかとても気になります。

見知らぬ方と感動を共有するって、やはり俳句を通して
心がつながったようで、嬉しく、幸せな気分になります。
桃さん、お会いできる日が来ることを願っています。


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