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「ざぼん句会」のメンバーの亘さんの 一句鑑賞です!!

2013/ 07/ 03
                 
 子規の一句鑑賞

                     高橋 亘    

   

     いくたびも雪の深さを尋ねけり   正岡子規



外が静かになってきた、雪が降り出したのではないか。
病床にいる子規は家人に尋ねる。
あの小さな庭石も雪に埋もれただろうか。
往来の音も消えた。降りやまない雪。
銀世界になったのは障子の明るさからもわかる。
自分で見に行けない子規は家人に何度も雪の深さを尋ねた。
そんな意味の句である。

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子規が肺結核を病んでいたのは知っていたので、
この句を読んだ時に病床の句であることはすぐ理解できた。
しかしこの句には病床にいるとか悲しいとか
そのような表現はどこにもない。

それでもこの句は病床の身を連想させ、
「いくたびも」「尋ねけり」の言葉が
雪を見るのもままならず、家人に頼らざるを得ない
子規のやるせない気持ちを伝えてきた。

そういう気持ちでこの句を読んでみると、
外出のできない子規が何故「雪の深さ」を尋ねたのか、
「雪の深さ」に隠れているものとはなんだろうかと考えてみた。

当時は明治という日本の勃興期、将来を熱く語る友がいて、
皆が近代日本という目標に向かって動いていた時、
若くして病床生活を送らなければならなくなった子規の心には
きっと孤独感や寂寥感が襲ってきたのではないか。

IMG_0074_1.jpg



そんな時に雪が降ってきた。
周りのものを静かに消していってくれる雪、
真っ白に覆われた世界は世の中の動きを止め、
自分を対等の位置に戻してくれるように思える。
雪が積もるほど気持ちは安らぎを深めてゆく。
子規はそんなふうに感じたのではないか。
ぽつりと独り言のように響くこの句は
そんなことを想像させる一句でした。
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