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今回の一句鑑賞は、新メンバーの弓夫さんの登場です。

           一句鑑賞

                        林 弓夫
  

    女 来 と 帯 纏 き 出 づ る 百 日 紅
                            
                              石田 波郷
 

1939(昭和14)年の作品。『風切』(1943年刊行)所収。
掲句は波郷の満26歳の青年時代の作品。

この作品の背景として、水原秋桜子を頼り1932
(昭和7)年2月
松山から上京。1938(昭和13)年6月、それまで寄寓していた
石塚友二宅を出て駒場会館アパートへ移っている。
そして7月には妹真砂子が上京して来て同居することになる。
こういう背景のなかで掲句をみてみよう。

真夏の暑い盛りの都会でのちょっとした出来事である。
男一人の下宿かアパートに女が尋ねて来た。
大家の小母さんにいわれてあわてて、半裸の状態から
着替えているさまがみえるようだ。

ここはやはり、一階ではなくて二階にいることを想像したい。
あわてて着替えて二階から階下へ降りてゆき、女と会う。
ここではどのような女であるかは詮索してはいけない。

             IMG_9889.jpg



下宿の周りには蝉しぐれが鳴り響き、百日紅が咲いている。
この百日紅はより涼しさを感じさせる白色ではなくて、
少し暑苦しさを感じさせる桃色である。

この句には、炎昼のなかにいるどこかだらしのない青年像が
浮かび上がり、波郷の青年時代の句では好きな作品の1つである。
学生時代、私にもこういう経験があり、なぜかこの句が思い出されるのだ。

実際に波郷はこの時期、「愛欲の事件」があったらしいが、
その内実は他人には何も語ったことはない。

                IMG_9565.jpg


破郷は、よく女性の句をこれ以後も作っていくが、
露骨ではなくあっさりとしており、西東三鬼のような性的なものはない。
外に、女の作品では「六月の女すわれる荒莚」(1946年)が好きである。
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レオフェイ
Posted byレオフェイ

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