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燐さんに選ばれた方は、、、

    「都市」の一句鑑賞(11)       

               本多 燐



       
      まさをなる空に月あり初鴉    工藤美風


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作句の際、自分の気持ちを実直に言葉へ乗せていくタイプの人と、
言葉を整えながら自分の気持ちを研ぎ澄ませていくタイプの人が
いるように思う。

後者の場合、言葉を整えていく過程において、
作者の美意識が作品を理想化していくことが顕著である。
一見写生的な作品であっても、実際は知的な再構成により
作品が完成されることになる。

美風さんの作品は、まさに後者であって、
その知的な再構成の妙に、私たちは風韻を感じるのだと思う。

理想を求めるということは、生きている今が
理想でないからこそであって、現実には触るることの
叶わないものを追うという点において、哀れを誘うのだ。

しかし、理想化されるということは、しばしば様式化と
同一の作業となる。理想を古典に求めると、
それは猶更かもしれない。
全てが雪月花に集約されていくことになる。
もっとも、集約された中にも、個性の揺らぎが、
必ず顕われてくる。

                IMG_1124.jpg


例えば富安風生の「まさをなる空よりしだれざくらかな」
という句の「かな」という切れが、恥じらいを含んだ俳句的な
表現であると同時に、どこか嫌味と紙一重の危うさを
持っているのに対して、美風さんの句は、「月あり」と
キッパリと切って、「初鴉」と擱く潔さがある。

この潔さは、手練れの無い美しいものであって、
風生の名人芸の持つ面白さとは対極の、清新な感動だ。
理想を求める再構成の作業が、いつしか流れ作業に
陥らない限り、美風さんの俳句の若さは保たれるのだろう。
それが保たれる予感を感じさせるところに、
美風さんの句のオーラがあるのではないだろうか・・・。
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レオフェイ
Posted byレオフェイ

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