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ミュージシャンでもある、そのさんのピュアなブログをどうぞ!

2013/ 12/ 07
                 
    一句鑑賞                     

              なかむらその


  柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺     正岡子規


子供の頃から庭に柿の木があった。
両親が結婚した時に母の父が記念にと
植えてくれた木だそうだ。

        IMG_5055.jpg


今年も両親と一緒に柿を収穫した。
私にとって柿は「日本の秋」の象徴である。

高校時代をNY州で過ごした私は、
日本の高校には一年生の一学期しか通っておらず、
どうにも教養が抜け落ちている部分がある。
そんな私が昔も今も大好きなのが、
小学校の時に習った、日本人なら知らない人
ないであろうこの句である。

これは子規が脊椎カリエスの療養の際に
立ち寄った寺でつくった句だ、とか、
子規は実際には法隆寺には行っておらず
東大寺でできた句だと言われている、とか、
そんなことを知ったのはごく最近のことだ。
「法隆寺の茶店に憩ひて」と前書きがあると
言うのだから、私はそれを素直に信じたい。

句の成り立ちを知らなくても、
この句の持つ絵はがきのような美しさはわかる。
日本の秋を告げる情緒もわかる。
境内にあるのは見事に実をつけた柿の木。
見えるのは、葉の緑、柿の色、空の青。
そして作者が柿にかぶりついた瞬間、誰かが鐘を撞く。
鐘の音は青空の彼方へと響いていく。

そう、この句から感じるのは何よりも
透明な空気感と秋の青空である。
青空があるからこそ柿色が美しく映える。

         IMG_6831.jpg


NY州に着いたばかりの秋、
私は日本が恋しくてたまらなかった。
寒過ぎるからなのか近くには柿の木は
ただの一本もなかった。
そのせいか空の色も違って見えた。

今回、改めてこの句を鑑賞して気がついた。
あの頃私が恋しかったのは、柿の木の背景にある、
抜けるように青い日本の秋空だったのだと。

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