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勉強会で、中村汀女をレポートした奈津子さんによる句の鑑賞です。

2013/ 12/ 16
                 
       中村汀女 子供の句          

                        杉本奈津子

   
    おいて来し子ほどに遠き蝉のあり
 
汀女には三人の子供があり幼児期の子供に注ぐ
愛情深い母としての作品がたくさんある。
末の男の子が入院して一時、危篤状態に陥り漸く回復して
退院となった。母としての汀女はほっとした事だろう。
少し気持ちに余裕が生まれ久し振りにホトトギス同人句会に
出席した。子供の看病に気をとられていたが外に出てみると
季節は夏で蝉の声にも始めて気が付いたのかもしれない。
句会にでたもののやはり家に置いてきた子の様子は
気にかかる。遠くの蝉の声が何となく淋しげだ。
「おいて来し子ほどに遠き蝉」に子を案ずる母の気持ちが
読み取れる。子を持つ親は誰しも分かる気持ちだろう。

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     あわれ子の夜寒の床の引けば寄る

 汀女、仙台時代の句である。
これも末の男の子の事である。末っ子はいつまで
たっても気に掛かる存在だ。
いつまでも親の隣に寝かせている。
九州生まれの汀女にとって東北の秋の夜寒は
身に沁みたに違いない。
寒くはないかと子の布団を引き寄せると軽々と動く。
子の小ささ、いじらしさに心を打たれた事だろう。
「あわれ子の」とまずもってきた事で子に対する
母の気持ちが強く伝わってくる印象深い句となっている。

           
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      咳の子のなぞなぞあそびきりもなや

 病気の子も少し起きられるようになると
退屈して母に遊んでくれとせがむ。
「なぞなぞあそびきりもなや」と、ほかの家事ができないので
少し困りながらも優しく相手をしている姿がみえる。
「きりもなや」という下五がとてもいいとおもう。

 ほかにも子供を詠んだ句は沢山有るが何れも愛情に溢れている。
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