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新人のれいさんのたおやかな文章をお楽しみください。

     1句鑑賞
                   菅野 れい

  父の名の和綴じの冊子白露かな    野木桃花

この句は、「俳句」11月号に載っていたものです。
作者は結社「あすか」の主宰。
私のような初心のものが、よその主宰の方の句を
鑑賞しようなど、恐れ多いことこの上ないのですが、
今、心に掛かっていることにあまりにもぴったりだったので、
失礼を承知で取り上げさせていただきました。
“鑑賞”ではなく“感想(妄想?!)”ということで、、、

季節は初秋。
暑さも少し和らぎ、時折吹いてくる風は、ほのかに
涼味を帯びている。
そんな昼下がり、時代を経た日本家屋の書庫で
一冊の和綴じの冊子(もちろん古びている)を見付ける。

IMG_5596.jpg

裏を返すと亡き父の名。頁をめくっていると、
父の人となり、来し方、共に過ごした日々の
あれこれなどが思い起こされる。
静かに流れる時間(とき)、、、、
そんな情景が浮かんでくる一句です。
激しさやじめじめした湿っぽさは感じられない。
“白露”という季語と、それに付けられている
“かな”から、かすかに感情の揺らぎが汲み取れるのみ。
それなのに、亡き人を偲んでいる様子や
その思いまでもが、なぜかしみじみと伝わってきます。

RIMG0031.jpg

思いの丈をストレートに吐露したものより
物や自然に託してさり気なく表現した者の方が
思いの深さやものの憐れというようなものを、
より細やかに、心に沁みるように伝えてくれるという
ことかもしれません。

そんな句に心魅かれ、いつの日か自分もそんな句を
作れるようになりたい、そう思うこの頃です。
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レオフェイ
Posted byレオフェイ

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