fc2ブログ

Article

        

こう助さんが俳句の勉強本を紹介してくださいます。

2014/ 02/ 15
                 
   二人の「けんきち」について 

              江口こう助
 
俳句を始めて四年目を迎える。
何時までも初心者として甘える事も
出来まいと思い、昨年の夏に山本健吉薯の
「定本現代俳句」を購入した。

山本健吉は文芸評論家として名高く
古典詩歌から現代文学まで多くの著書を
残しているが、俳句に関しての本が
一番多いのではないか。

「定本現代俳句」では、過去の俳諧から
脱して新しい写生俳句を試みた
正岡子規から平成の俳人まで、
四十八人の句の解説をしている。

この本の良さは著者が文芸評論家として
様々な文芸に精通している事である。
取り上げられた句に対して的確な
短歌・和歌との比喩や小説までも
対象として句の解説をしている。

また、各々の句が詠まれた背景の研究は
並々ならぬものを感じる。
例えば「鶏頭の十四五本もありぬべし」の
解説には六頁(四〇〇〇文字以上)も
あてられている。

         IMG_8485.jpg

ただ感心するのは長文でも無駄が無い事である。
例えば中七の「十四五本も」を「七八本も」に
置き換えたり、上五の「鶏頭の」を「枯菊の」に
した場合との雲泥の差が有る事が
私にも解るように書かれている。

他の解説文も長短の差は有るが、それぞれの
句に関して鑑賞の要点が解りやすい。

二人目の「けんきち」であるが私には
俳人としてよりも、随筆家としての
イメージが強い楠本憲吉である。

旅や食に関する本も多く書かれて
いるからであろう。昨年末に古書店で
同編著の「作句歳時記」(四季と新年で五冊)を
購入した。

購入の動機は前書きで「歳時記を兼ねた入門書を試みた」
また「俳句用語辞典も兼ねている」と
書かれていて、実際に拾い読みしてみると
解りにくい俳句用語の説明が記されて
いたからである。

季語の説明と例句は合本歳時記と
同じ程度で有るが、多く使用される季語に
は鑑賞文が二つ前後載せられている。

鑑賞文で面白いと思ったのは、
時々ではあるが初心者の句だと思われるが、
原句と添削句(作句のポイントを添えている)
が出ていることや「閑かさや岩にしみゐる蝉の声」の句等では
芭蕉自身の三回の推敲経過も示されている。

新年の歳時記の最後の方で「作句の実際」と
題して百四十六頁が当てられている。
楠本憲吉自身の句も載せられているが、
残念ながら自解文はない。
家で歳時記を使う時、一年間はこの
「作句歳時記」を使ってみたい。

    IMG_5501.jpg

評論家としての山本健吉・俳人としての
楠本憲吉、両者の本を入手した目的は
全く違うが、季語の解釈の重要性は
両本から伝わってくる。
スポンサーサイト



                         
                                  

コメント