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夏斗さんによる主宰の1句鑑賞です!!

2014/ 06/ 30
                 
            主宰の一句鑑賞(2)
                           秋澤 夏斗

          夕菅の風ゆたかなり語らむか    中西夕紀 


師の句集「朝涼」に掲載された一句です。

夕菅はユリ科ワスレグサ属の高原に咲く大型の草本です。
日光黄菅によく似ていますがやや花の色が淡く、
決定的な違いは日光黄菅が昼間に咲くのに対して
夕方に咲いて朝にはしぼんでしまうところです。

季節は夏。
夕菅の花が一つまた一つと咲き始め、
あたりには少し風が出てきました。
作者はおそらくは信州の高原のロッジ
あるいはロッジ風のホテルのベランダで
その花に出会ったのでしょう。

                         IMG_2803.jpg


もう日はすっかり落ちており、
一仕事終えた作者はのんびりした豊かな気分で
ベランダの椅子に腰掛けてワインでも飲まれ、
可憐な淡黄色の花の群落をじっと見ておりました。
ほてった頬にそよ風がとても心地よくあたっています。

「夕菅」と「風」で上五と中七はすぐに
頭に浮かんだに相違ありません。
下五には少し苦労されたのではないでしょうか。
私達なら高原の情景とかロッジの様子を
付け加えて満足するところでしょう。

しかし、作者は「語らむか」と結んだのです。
誰に話しかけているのでしょう?夕菅に?それとも連れの人?
何度も繰り返して読んではっと気づきました。
ニッと笑って読者に語りかけているのです。
そう思ったとき私の体はぴくっと震えたのです。
それ以来とてもこの句が好きになりました。

                          IMG_2718.jpg
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