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光弘さんが実体験から、誓子の句を読み解きました。

2014/ 08/ 30
                 
  私の好きな1句
                       坂輪 光弘


七月の青嶺まぢかく溶鉱炉    山口誓子

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この句は、誓子が大坂住友合資会社に入り、
北九州の八幡製鉄所に出張を命じられた時に
作ったものだそうです。

俳句を始めて間もない私ですが、
工場などの句をこれまで目にしたことがなく、
特に鉄の会社に入り、最初の実習で高炉工場に配置されたので、
入社当時のことを鮮明に思い出し、
思わず目にとめた句です 。

工場に入ると工場長席の上には神棚を祭ってあり、
隣に工場の全てを知っている“宿老”と言われる老人が
座っていました。更に工場では、一酸化炭素などの
有毒ガスの検出感度が最も良いカナリアを飼っていました。

IMG_2594.jpg


後にサリン事件で機動隊がオウム真理教の本部に突入する
先頭の隊員が鳥かごを持っているのをテレビで見て、
あれはカナリアだと思いました。

現場では、兎に角[体で覚えろ]と先輩に言われましたが、
熱いのとスケールの大きさに圧倒され続けました。

同じ 誓子の句で後に大阪で作った
夏草や汽罐車の車輪来て止まる
があります。
私も若い頃で、夏草のむっとした暑さと、
製鉄所のスケールの大きな中で必死に生きていたのだと思います。
それらを同時に思い出すことのできる句です。

定年後、学校に奉職して、学生と共に大学祭などでたたら製鉄や、
炭焼きなどを試みました。ドラム缶でたたら製鉄をやった時、
前の会社の連中が来て、今は操業を空調の効いた部屋で
テレビの画面を見ながらやるので鉄を造る実感が
わかないと言いました。
ドラム缶でやれば、鉄が溶ける温度の1500度以上になると
肉眼で見ると危険なこと、砂鉄から溶銑が出てくるところは
本当に神秘的なものです。
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