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「現代俳句勉強会」の担当者による俳句鑑賞です!

2014/ 10/ 22
                 
        川端茅舎一句鑑賞        
                          盛田恵未                   

新涼や白きてのひらあしのうら

この句は昭和9年刊行の『川端茅舎句集』にある句である。

代表句「金剛の露ひとつぶや石の上」のような仏教的な匂もなく、
具体的でどこか懐かしさも感じさせる句である。

少年時代の茅舎は、夏は浜町河岸の水練場で水泳を習い、
やがては師範代を勤めるほど上達したそうだ。
もともと色白長身の秀才少年に真っ黒になって過ごした
夏があったことは、この後の茅舎の人生を考えるとき
ホッとする思いがある。
 
茅舎は医者になるべく一高を受験する。
本人も受かると思っていたそうだが、不合格となる。
ここで茅舎の人生が大きく変わった。

            IMG_2200.jpg


父に連れられ幼いころから身近にあった俳句。
書画彫刻もなす父と、画家であり異母兄でもある
川端龍子の影響もあってか、やがて絵画の道に入ってゆく。

茅舎はこの両方で才能を発揮して行く。
絵画は白樺派の岸田劉生に師事し、
俳句は『ホトトギス』や『雲母』で活躍する俳人から
強く影響を受け、投句を続けてゆく。

しかし大正12年、茅舎23歳の時関東大震災が起きる。
九死に一生を得るが、つづく母の死、肺尖カタルの発病、
失恋、絵画の師匠岸田劉生の死、妹の死と相次ぐ不幸がおきる。

岸田劉生の死は大きく、茅舎はこの後絵画の筆を断ち
俳句一本に進むことになる。身の置き所がなく
彷徨する日々の中、やがて仏教に影響を受けた句が
めばえる。

昭和五年茅舎33歳、『ホトトギス』でこの句は巻頭を飾る。
新涼の季語に澄み切った透明感を見、手足の裏を
よけいに白く見せる。

                IMG_3910.jpg


新涼は茅舎の清心にもつながるのではないだろうか。
過ぎた夏を思いおこし、これまでの自分の人生を
重ね合わせているように思える。新涼と白が響き合うことで、
実はこの句にも仏教的な影響があることに気付く深い句である。
                     
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