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しばらくぶりに心さんの登場です!

              主宰の一句鑑賞 (3)
                                栗山 心


      北風に出るための肉厚く切る        中西夕紀
                         『都市』2013年2月号より

夕方のニュース番組で、長く通っている飲食店で
食事をする人たちのルポを放送していた。
大盛りの牛丼やちゃんぽん、カレーやラーメンセットなどを
食べているのは、80歳以上の高齢の方たち。
皆、若い頃からの常連さんである。

ここの、これが食べたくて、人によっては、
わざわざ遠方から来て食事をしている姿は、
色艶も良く、生き生きとしている。
食欲と、生きる力というのは、大いに比例するのだ。

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最近私は、昼食に、学生や若いサラリーマンに人気の、
某カレーチェーンのカツカレーを食べた。
その後、食べ疲れたのか帰宅後、昼寝してしまうことがあった。 

ふわふわとした歯ごたえの無いものや、ローカロリーなもの
(私は密かに「女子飯(めし)」と呼んでいる)を食べ続けていると、
歯ごたえがあり、高カロリー、即パワーに変わる
「男子飯(めし)」を喰らったとき、体のほうが疲れてしまうのだ。
ただ食べることも、なかなかパワーが必要だ。

さて、掲句だが、主宰としてはかなりの異色作ではないだろうか。
作者は、やや食べることに疲れている。
北風の吹く屋外に出るため、自分の中のエンジンを全開にさせるように、
肉を厚く切っている。

体が肉を食べることを求めている若い頃なら、
そんなことを意識したことも無かったろう。
自分に言い聞かせるように「厚く」切ることで、
自分の心を、体を、奮い立たせている。
              
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そして、「北風」が、世間や、難しい人間関係のメタファーかとも思われる。
作者は自分に活を入れて、戦いに挑みに行くとこなのかもしれない。

もう若くはないが、肉を喰らうことが出来て、
北風の中の外出を避けるほど老いてもいない世代のリアルな思いに、
非常に共感する。
老いを楽しく読んだ、まさに俳味のある一句ではないだろか。


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レオフェイ
Posted byレオフェイ

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