fc2ブログ

Article

        

たつやさんが初めての中央句会で気に入った俳句だそうです。

2015/ 01/ 23
                 
       都市の一句鑑賞(22)
                           澤田たつや


       草原の余熱を背に流星群  
                          桜木七海
                                 都市2013年2月号



この句は、上五に草原の漢語を置いたことにより、
読み手のロマンを一気に、掻き立てるのである。
草原の東より日が昇り草原の西に月が沈むといった風景は
日本では見ることは出来ない。

世界各地に広大な草原があるが、とくに、ユーラシア大陸中央部には、
東は中国北部から西はハンガリー・アゼルバイジャンまで
延々と大草原が続いている。そして大草原の東部にモンゴル草原がある。
この句の草原はモンゴル草原を指していると思うものである。

昼間眺めた草原は一望千里、澄みきった秋空の下に
果てしなく続いている。そして人っ子一人、
一本の樹木すら見ることはない。
まして人の行き交う道など全くない。はるか彼方に、
ぽつんとモンゴル遊牧民の包(パオ)が見えるだけだ。

しかし、今は草原は夜のとばりにつつまれ星明りが頼りだ。
月の出はまだだ。
夜の大気が頬を撫ぜていく。昼間の熱気が冷めやらない草原から、
ほのかな香りが立ち昇ってくる、夜の静寂の中に身をゆだねると、
煩わしい人間社会の事など洗い流されていくようだ。

夜空を見上げれば何と見事な星空だろう、
澄みきった夜空には星々がいずれもくっきり輝いている。
秋を代表する「ペガスス座」が天頂にせまり、
北の空には「カシオペア座」が,南天には
「うお座のフォーマルハウト」がまたたくのである。

そして、これらの星座を寿ぐごとく、「オリオン座」の流星が
降り注いでくるのである。その流星の明るさやスピードは
あまたの流星群の中でも屈指と言われているだけに、
その壮大な無音の宇宙のシヨーに対し感嘆と畏敬の念が
高まるばかりである。
どの位、天空を眺めていただろうか、ふと気が付くと背中は
草原の余熱によるものか、やんわりと暖かさが感じられる。

この句は、ユーラシア大草原に連なるモンゴル草原に対し
宇宙の営み即ち「オリオン座」流星群を対峙させて
天と地の壮大なドラマを詠い上げているのである。
そして背に草原の余熱を受けることにより、草原の命(いのち)知り、
天空より降り注ぐ流星により宇宙の命(いのち)を感じたのである。

            IMG_5353.jpg


即ち、この句の底流には天と地の生命讃歌が流れているのである。
再び、この句に目を落とすと、わずか十七音で
壮大な天と地を見事に詠い上げた作者に改めて
敬意を表するものである。

スポンサーサイト



                         
                                  

コメント