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青さんによる、有也俳句への思い語っていただきます。

    都市の一句鑑賞(25)
                               北杜 青



           枯菊を括れば胸に日の匂ひ     森 有也 
 
刈り取った枯菊の大きな束を全身でいだくように括っているのです。
冬の静謐とした日の光を蔵して、なお色を残した枯菊が
作者の胸に日の匂いを残していきます。
対象への思いが抑揚の効いた表現によってしみいるように心深く残ります。

        IMG_7046.jpg

 
この句の眼目は「胸に」匂ったところだと思います。
なぜ「胸に」がよいのかを説明するのは難しく、
説明するほど陳腐になります。よさが説明できる句は技のある句です。
本当によい句はそのよさを説明することができない句だと思います。
ただ、作者の感じた詩情に深く胸打たれる句だと思います。
 
霜や時雨、厳しい寒気に触れ、蕭々と朽ちていく冬の象徴である
枯菊を詠んで、なお、これほどあたたかい感情が残るのは
有也さんの句だからだと思います。

                          IMG_6990.jpg

 
有也さんの句は生きとし生けるものの儚さに対する慈しみ、
悲しみが、その奥底にいつも流れています。

     冬菊のまとふはおのがひかりのみ   秋櫻子

秋櫻子の冬菊の句には、凛とした強さを感じ、
有也さんの枯菊の句には、駘蕩とした潔さを感じます。

私が「都市」に入会して、なかなか馴染めなかったころ、
有也さんの句会での軽妙洒脱な司会や温かい人柄に触れさせて
いただいたおかげで続けることができたと思います。
どのように作句していけばよいのか悩んでいた時に「都市の10句」で
この句を拝見して背中を押していただきました。
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レオフェイ
Posted byレオフェイ

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