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有也さんによる、歌人の茂さんの俳句紹介です。

2015/ 11/ 11
                 
      都市の一句(26)
              ― 十七文字の異次元 ―
                               
                          森有也

   
    辞令から顔上げて見る桜かな        笹山 茂
 

無職になって10年、断遮離というので押し入れをかき回して
片っ端から物を捨てている。
しかし、最後まで残ったのが会社時代の辞令の束である。
一つ一つ見て行くと、すべてに思い出が詰まっている。

ある時、とうとう地方への転勤辞令が出た。
この時は多分この句のように、窓の外の桜を
虚ろに眺めていたのかもしれない。
転勤先ではもともとが田舎出だから、
小さな町の人達とは意気投合、歌って踊れる室長として
楽しい一時を過ごした。

                IMG_9738.jpg


さて、揚句の作者は校長先生とのこと、辞令を渡す方だったのだ。
この場合の辞令は転勤する本人には受け入れ難い、
また渡す校長先生にしても心痛むことだったのだろう。
作者の優しい心遣いが詰まった句である。

作者の茂さんは俳句を始めて数年とのことであるが、
長年短歌をたしなんで来られたという。
そのせいか、茂さんの句はどこかに短歌の抒情を残していて、
その中に佳句が多い。

      つながらぬ血はさびしかり黄水仙     茂

      弐心三心もあり除夜の鐘          茂


俳句の先人達も多くは短歌をたしなみ、優れた俳句を残している。
また、同時に「抒情」と「写生」の狭間で
葛藤する時代を経験している。
俳句は物に頼って表現しつつ、人の幽かな心の動きを
活写するために先人達が苦労して乗り越えて来た道でもある。

茂さんの俳句は、抒情感を巧みに表す独特の分野で
発展する期待を抱かせる。短歌で鍛えた優雅な言葉群、
リズム感、心の動きなどが、言葉と言葉の異次元空間で
表現される俳句で、開花されることを切に願っている。
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