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フクシマで、今もボランティアを続けている茂さんの鑑賞です。(写真も茂さんの提供です。)

2015/ 12/ 29
                 
       都市の一句(27)
  
          ― ただやさしい眼差しだけではない ―  
                                    笹山 茂
   
    山の藤誰見てゐてもゐなくとも                        
                                  横山 千砂

山藤の花の本当の美しさを知ったのは、
東日本大震災の年の5月のこと、冷たい涙雨の中で
じっと雨に打たれて咲いている山藤の花が
そこにあった。

その日はボランティア活動ができず、
ほぼ1日雨宿りをしているだけで過ぎていた。
結局、「大雨の中でも来てくれる沢山の方が
いることが何よりもうれしい」という言葉をいただて、東松島を去った一日、
励まされたのは私たちであった。

この一句は、その時の私の気持ちにうんと近いと
思った句である。そういう眼差しの方が
この会にいるのだということを知って、
うれしく思った。

                       
shigechann.jpg


聞けば、作者の千砂さんは、私と同様俳句を始めて
まもないとのこと、句の中に優しい眼差しが
感じられる。
これまでつくられた句から三句、挙げてみたい。。

    吾が影に守宮あわてて逃げにけり 千砂

    遠山のトタンが反(か)射(え)す冬日かな  千砂
    
    祖父の死と入れかはりし子初幟  千砂


このようなやさしい眼差しにあふれる句に出会うと、
やや説明づいて理屈で語ろうとする短歌とは違って
その抑制と滋味によって、つくづく俳句は良いなあと思う。
と同時に、語り過ぎて理に流れるばかりの自分の句業の進歩のなさを恥じてしまう。
 
しかし今回は、
 
   野馬追の神旗掲げし女武者           千砂

という力強い句が掲載されている。
福島県相馬では野馬追いは男祭であり、女子供は
二階屋や高いビルの窓から走る馬を見下ろしてはならないと
言われて育ってきたという土地柄である。
ボランティア活動の帰りには、一つ一つ丁寧に
おられた野馬の折り紙が手渡される。

しかし確実に時代は変わり、相馬は新しい力を必要としている、
そのことが強く感じられる句である。そしてそのことは
横山千砂氏の登場をも強く印象付ける句になったのではないかと思う。


shigerusann.png
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