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ショートショート作家の良さんのすごい体験です!

2016/ 02/ 15
                 
          いきなりジェット

                      城中良

ジェット機のコックピットの席に座ったのです。
前方に羽田の滑走路が長々見え、操縦席の前も回りも、天井にも
訳もわからぬ計器が赤く、オレンジに、緑に点滅しているのです。
操縦桿の上下、左右、傾きの操作の説明があり、操縦席に座り、
様々な説明に頷いてしまったのです。

                       DSCF7304.jpg


むろん副操縦席の人はベテランパイロットで、
羽田を立ち、富士山を一周して、また羽田の飛行場にもどる、
と言う飛行なのです。

勿論本物のジェットAIRBUS A320でなく、
A320の実機と同じコックピットに座り操縦桿を握り、
空を飛んでいると同じ状態が経験できる、パイロット養成のための
高度なフライトシュミレータなのです。
何も分からぬものが、いきなり本物の操縦桿を握っているのです。

エンジンは始動を始め、機体は振動し、エンジンの音が伝わってくる。
座席の左脇にある堅く、がっしりしたレバー引いたのか、押したのか、
定かに覚えていないが、となりのパイロットはこともなく出発です
と言う。

滑走路が矢のように飛んでゆく、操縦桿を少し倒しての声、
どのくらいどう倒せば、などと考えるまもなくジェット機の窓には
千切れた白い雲がとんでゆく。

操縦席の小型のブラウン管に水平の線と縦の線が十字にあり、
傾きと上下降が、左右の傾きがブラウン管の動く緑の線によって、
解るようになっている。ひたすらジェット機を水平に保つため、
縦・横に動く緑の線が十字から離れぬように、
操縦桿を動かすのに必死だった。

隣のパイロットが、あれが房総半島です、あれが三浦半島です、
あれが駿河湾です。との説明の声も空ろに、計器を見つめつづける。
富士山が見えてきました。との声、前方の平野に小さな山が見えてくる。
現在の高度何々フートと言われたが、飛行機の傾きが気になり思いだせない。
高度はどんどん下がり、富士山がぐんぐん近づいてくる、
水平飛行となり堂々たる富士がコックピットから見える。
うーん素晴らしい、うーん美しい、計器を横目に富士をながめる。

                           DSCF7310.jpg


富士山を一回りすると機体は一挙に上昇し、房総半島が前方にみえてくる、
機体は羽田に向かっているのだ。いきなり、機体は左に傾いたらしく
海の水平線が45度に傾いてくる、操縦桿を倒してください、
とパイロットの声がとぶ、あっとゆう間に機体は、左から右に傾く、
機体を水平に修正してください、の声がする。
もう何をやっているのか、訳が解らない。

ジェット機は恐らくダッチ・ロールしているに違いない。
機体は水平飛行を始める。パイロットは呆れて、
自動操縦に切り替えたのだ、と思う。

パイロットがジェットをもう一度上昇させ羽田に向かいます、と言う。
初めての操縦で着陸できる訳はない、どの位水平飛行したのか、
羽田が見えてきました、滑走路に入ります、と言う。
真っすぐな滑走路の標識が見えてくる、着陸態勢にはいり、
滑走路に突っ込んで行く。暫くして、パイロットに足にあるブレーキを
踏んでくださいと言われる、再足で強く踏む。無事羽田に到着し、
ジェット機は静止したのです。

フライシュミレータの操縦桿を握っているときは感じなかったが、
コックピットから降りて、地上を歩くとからだが浮いている、
船酔いと違う酔いが急におそってくる。
ふわふわしながら飛行の酔いに堪えて、よろめく足でAIRBUSA320を
後にしたのです。
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