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今回は、菜園さんの句の紹介です。

2016/ 09/ 11
                 
         都市の俳句32
                              鈴木ちひろ  

     注連飾る男の口の一文字        金子菜園

一読して光景が目に浮かぶ、きりっとしたリズムの、清々しい句である。
注連飾りを飾るのは一家の主の仕事だ。
家の内外の大掃除が終わり、すっきりと方付いた。
家中の空気が新しくなったようだ。
お節料理の段取りもうまく運んでいる。
あとは注連飾りを飾れば新年を迎える準備が整う。

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これは神棚に新しい注連縄を飾っている場面だろうか。
丁寧に拭き清められた神棚に、青々とした榊やお神酒をお供えする。
踏み台に乗った作者が牛蒡締めだろうか、新しい注連縄を両手に掲げ、
位置を確かめながら真剣な面持ちで飾り付けている。

中七・下五の「男の口の一文字」に作者の生真面目さ、
家長としての矜持が出ている。
バランスよく飾り付けられた注連縄は美しく、
真っ白な紙垂は目にも清らかだ。
これで年神様をお迎えする準備が整った。
この時作者は家族とともに神棚に、今年一年の無事を感謝し、
やがて来る新年への期待をふくらませたのではないだろうか。
 
菜園さんには生活のひとこまを丁寧に詠んだ句が多い。
趣味の野菜つくりの楽しさや、小鳥などの小動物や、
自然の風物を詠んだ句からは作者の確かな観察力や、
実直で温和な人柄がうかがえる。
生活者としての自分を率直に詠んだ句には実感があり、
巧まざるユーモアと滋味がある。

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俳句は自分の生活を詠う この事に常に真摯に取り組んでいる
作者の姿勢は大いに見習うべき点であると思われる。
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