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現代俳句勉強会で草田男の担当の、夏斗さんがロマンチックに語ってくれました。

       中村草田男の一句鑑賞
                             秋澤夏斗

  貝寄風に乘りて歸鄕の船迅し   草田男


草田男の第一句集『長子』の冒頭を飾る一句である。
故郷を目指す船の甲板に佇んで、草田男は遥か彼方の
故郷の方角を眺めている。
やや強めの春の風が吹いて、船は海を滑るように進む。
冷ための風が心地よく草田男を包み船のスピードにつられて
故郷への思いも高まって行く。

                DSCF5580.jpg


作者の故郷は松山。瀬戸内海に浮ぶ島々も、またたく間に
視界から消えてゆく。瀬戸内海の風と、作者の高揚した気持ちが重なった
とても気持ち良い句で、『長子』の冒頭の句としてふさわしい。

ここまで想像して、はたと気付いた。歳時記を紐解くと貝寄風は
「冬の季節風のなごりに3月下旬ごろ吹く西風。
この風で大阪住吉の浜辺に打ち寄せられた貝から造花をつくり、
四天王寺の聖徳太子をまつる聖霊会に献じたという。」
と書かれている。

IMG_2402.jpg


松山へ向う船はおそらく関西方面から出発したのではないか。
とすれば、故郷へ向う船を迅くしているのは東風ではないのだろうか。
地図を調べても西方から松山へ向う有力な航路は見つからない。
 
何故、草田男は「貝寄風」を用いたのか。色々考えた挙句に
私はひとつの結論を得た。つたない私の考えでは、「強東風」では
句にロマンが生まれない。草田男は瀬戸内海に生息する数多の貝を
引き連れて故郷を訪ねたかったのであろう。
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レオフェイ
Posted byレオフェイ

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