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遅くなりました。7月の吟行記です。行ってない方はきっと行きたくなりますよ

2017/ 08/ 16
                 
      御嶽渓谷 ニホンカモシカと釣鐘と蛇の衣      
                               樋口冬青
  
まさにこれぞ梅雨空という中の吟行になりました。
お当番さんは参加人数を心配していましたが、
主宰はじめ24名が遅れることなく軍畑に集合。

私は皆より少し早めについたのですが、
更に早い人たちがいて「ほらほら」と背後の斜面を指さします。
夏草の茂みの中に何やら動くものが!「カモシカ」と聞いてびっくり。
目を凝らせば、灰色のふさふさの毛におおわれた動物が、
葛の葉を引っ張って食事中。まだ若い個体のようで
想像より小さいし角もありません。
それでもこの目で確と見られました。 
雲行きは怪しげですが、「来てよかった」と万歳したい気持ちでした。

野生のカモシカを初めてこの目で見たのですから、
次々と降りてくる仲間に「ほらほら」と指さして、
のっけから興奮気味の私です。

この日の吟行はわたし的に波乱の幕開け。
心の中でもう一人の冬青が「おさえて、おさえて」と
両手で合図してます、「こんなんじゃ句作できないよ」と言いながら。
そうなんです、私の俳句脳が起動するまで、もう少し時間がかかりそう。
雨は今にも降り出しそうなのに。

句会ではカモシカまたは羚羊の句が5句ありましたから、
冷静沈着、俳句脳をしっかり起動させて降り立った方はいらっしゃったのです。

     羚羊の葛の葉引けば梅雨深む         青


「雨をプラスにして、吟行を楽しみましょう」と先生の挨拶で、
いよいよ都市吟行幕開けです。雨も降りだして、
句帳と歳時記の他に傘が外せなくなりました。
雨がやめば青葉時雨が、というわけでやっぱり傘は必要。

渓谷沿いの濡れた山路を慎重に歩きます。
木の間から多摩川が見え隠れしています。

     水の音ありて思ほゆ桜桃忌         井蛙
 
青時雨の川沿いの道から、夏草をかき分けるようにして河原に降りると、
夏霧が川面に立ち込めて幻想的な風景が広がっていました。
その中をカヌーやボートが次々現れては下流に消えていきます。

     オールあげ互ひにエール夏の川       遊妹

     一人乗るカヌーの速さ青芒          梢

                 

                               DSCF7994.jpg



川霧の中にぼんやり吊り橋が見えています。
吊り橋を渡るとほとりに寒山寺という小寺があって、
そこにあまり大きくはないけれど立派な鐘楼があるのですが、
自由に撞かせてもらえます。前回は順番を待つ人が大勢並んでいて、
諦めてしまったことがずっと心残りでした。
河原でカヌーやラフティングの様子を観察作句している仲間から離れて
一人で寒山寺に向かいました。

幸い鐘楼には誰もいません。荷物を降ろして全身に力を込めて
思いっきり撞きました。力任せに何かを打つというのは
日常あり得ない行為です。これは極めて貴重な体験で、
実に爽快な気分です。霧の中から聞こえる冬青渾身の鐘の音を、
皆さまは何処でどんな風にお聞きになったのでしょうか。

                  DSCF8035.jpg


鐘を五つ打ってから橋を戻って、ランチタイムです。
私は甘酒を買って、持参のお弁当をいただきました。
雨の中を歩き疲れて飲む冷たい甘酒は、心身ともにリフレッシュして
新しい活力が生まれます。甘酒が夏の季語であることに納得です。
元気になって午後の句会に備えます。

句会場に到着したら、またまた「ほらほら」と指さす人が。
「なになに?今度は何?」興味津々で指さす方を見ると、蛇の衣。
石段を登りながら今脱いだかのような蛇の抜け殻が、
段の中ほどに長く伸びています。しばらくして主宰が、
レジ袋に入れて皆の前に持ってきて見せてくださいました。
蛇の皮は縁起がいいとか。こわごわ触ってみると、
意外に厚くて、半透明でしっかりした模様も見て取れます。
昔見た物はカラカラに乾いていましたが、今日のは妙に艶っぽく生々しくて、
持ち主、つまり脱いだばかりの蛇がまだその辺に居そうな感じがしました。
雨に濡れたせいか、それとも本当に脱いだばかりだったのか、
蛇のみぞ知る、でしょうか。

     蛇の衣師は丁寧に折りたたむ        光香


今朝は最寄駅から3時間弱電車に乗って青梅線の
山の駅に着きました。軍畑(いくさばた)という駅名からして、
なにか謂れがありそうです。各駅停車で3時間という距離は、
日常から非日常へ連れて行ってもらうのに必要な時間なのかもしれません。
普段の生活ではあり得ない時を、句友たちと大いに楽しんだ一日でした。
 
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