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切り口の新鮮な句を詠む悠歩さんの句を、順子さんが読み解きます。

2017/ 10/ 09
                 
          順子さん都市の一句俳句鑑賞    
                                大矢知順子

            嘘に嘘かさねしことも曼殊沙華      原 悠歩

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「自分の句で、一番好きな句ってある?」この稿に当たって、悠歩さんに 
聞いてみた。その時、「景が見えない句だけど…」云いつつ、掲げて下さったのが、この句であった。

私が悠歩さんに出会った最初の句は

     数珠玉や指切りげんまんまたあした (2014年)

なんとも愛らしい、素直な句だと思った。
幼い雰囲気を巧みに詠みこなす悠歩さんに興味を持っていた。
句会前のちょっとした挨拶にも、いつもこのイメージを称えていた。

その1年後、上掲の『 嘘に嘘かさねしことも曼殊沙華 』の句に
出合ったことは記憶に残っている。
実は、私はこういう句が大好きなのであるが、景の見えない句と、
できる限り遠ざけてきた作風であった。
その句を、一番好きよ、といったことに少々戸惑った。

この時、こう詠まざるを得ない何かがあったのかも知れない。
具体的には表せない何だろう。そういう句があっても
仕方がないと私は思う。ただ、「読解は、読者の経験に任せる」という
覚悟のもとで作るならば。

その後

     牡丹の芽じゃんけんに児はいつも石

     あかぎれの子はイクメンと呼ばれをり

     草餅や叱られし子の百面相


など、悠歩さん特有の着眼と、悠歩さん独特の作風の句がとび込み、
愉しく読ませていただいている。

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去年7月、小諸の日盛句会に同伴した。
「初めてなのでよろしくね」といつも謙虚な悠歩さんである。
が、半日早く小諸に着かれたわずかな間に、
現地サーチをしっかりしていられ、後着の私は、
当を得た案内に随分援けられた。

登山が趣味の悠歩さん、地図の見方、探求心に加え、
健脚であった。いつも多面性を見せてくれる。
俳友として楽しく、心強い存在である。

ちなみに、昨今のニュースを見ていると、
『嘘に嘘かさねしことも曼殊沙華』が、具象性をもって
テレビ画面に現れてくる。不思議な句である。
                           
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