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第3回 関山 恵一さんによる主宰の俳句の鑑賞です。
2017/ 11/ 21関山恵一さんによる 「都市」十月号の中西主宰の句の俳句鑑賞
ほうたるに二合半酒となりにけり
いいですね!蛍の出を待つひととき、期待に胸を躍らせながら酌み交わす
熱燗の新走り。「未だ出ない?」などと話しながらついつい一合が二合に・・
さぞかし良い吟行でしょう。
放鳥の一羽戻れる青田かな
佐渡での朱鷺の放鳥の景が浮かびます。
平成二十年に最初に放たれた朱鷺が戻って子を産み、
平成二十六年にはその孫世代となる朱鷺の誕生が伝えられました。
ていねいに育て、放った朱鷺が戻ってきて青田に白い姿を見せた時の
喜びが表れています。

星見えぬ街となりけり金魚に灯
「東京には空がない」と言った智恵子の詩の通り、煤煙が少なくなったとはいえ、
東京の空は相変わらず鮮やかに星を見ることが出来ない。
星の見えない夜を家に戻った作者が金魚の水槽に明りを灯す。
可愛らしい金魚が作者の帰宅を喜び、寄ってくる。
ほっとする作者の気持ちの読み取れる句です。
緑陰の男女のどれも恋に見ゆ
猛暑だった今年の夏、公園の緑陰には涼を求めて多くの人がいる。
なぜか皆カップル・・、若き日を思い出してどのカップルも恋人同士のように見える。
「もう一度あの時代に戻りたい」と思っている作者の気持ちが若々しい。

捨て猫に日数の汚れ月見草
自宅の近所に時々姿を見せる捨て猫、「もうこんなに大きくなって・・」
数々の修羅場をくぐってきたのか随分汚れている。
いや、修羅場でなく数々の恋を経てきたのかも。
「月見草」の花言葉は「移り気な恋」、別名は「待宵草」、
夜な夜な新しい恋を求めてさまよってきたのかも・・
「日数の汚れ」が良いと思ます。
筆圧にペンみしみしと雲の峰
日々添削、作句、原稿書きとペンを話すことのない主宰の生活。
今日も空は入道雲がもくもくと湧き上がり、夏日の快晴。
外の空気をいっぱいに吸いたい作者の気持ちに反してまだ書かねばならないことが
山ほど、思わずペンを持つ手に力が入っている。「みしみし」の措辞が秀逸。
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