都市十周年記念俳句大会特選句の自句自解の第三回です!
2017年12月21日 公開
夏霧の晴れてカールの花や花
岩原 真咲
2年ほど前の8月、南信育ちの友人に連れられロープウェイで
木曽駒ケ岳の千畳敷に登りました。当地の中学校では2年生になると
全員で木曽駒の頂上に登る習慣だそうで、その日も中学生の長い列に出会いました。

ロープウェイを降りカールのお花畑に入ります。
氷河跡は足元が悪く私は付いていくのが精一杯、
周りを見る余裕がありません。霧も立ちこめ足元の
花を見ながらもたもたと付いていきます。
木曽育ちの友人はすいすい身軽く、これはチングルマ、
シナノキンバイ、カラマツソウと指差し「これこれイワカガミよ」と
つぎつぎ教えてくれます。
そうこうしているうちにサーっと霧が晴れ花々が一度に
目に入ってきました。

さまざまの花が斜面に貼りつくように可憐に花を咲かせ、
種を守る健気さに溢れていて登山者の気持ちを清々しく洗ってくれます。
そんな景色にわが身を浸す幸せなひとときでした。
あかときの鉄条網や蝉生まる
杉本奈津子
夏の朝、散歩の時の事だった。
あたりはまだ薄暗く谷戸の小道には近在の人が
植えたらしい花々が可憐な蕾を付けていた。
太陽が顔を出すまでは花弁を閉じている花も
多いのだ。
細長い花壇の反対側は青い稲田で畔にはカルガモの
頭がちらっと見えていた。稲田の隣は少し小高くなっており栗の畑が
壊れかかった鉄条網に囲まれていて
小さな青い毬栗も既に葉陰に有ったように思う。

太陽がそろりと上りあたりを金色の光が包み始めた時、
錆びた鉄条網にも一条の光が差して小さな緑の塊が見えた。
かすかに動いているようだった。
眼を凝らすと何とそんなところで蝉の羽化が
始まっていたのだ。
緑に見えたのは蝉の羽だった。ゆっくり、ゆっくり
羽は薄緑に広がっていった。
短い蝉の命の誕生に立ち会った。
じいんとする光景だった。
岩原 真咲
2年ほど前の8月、南信育ちの友人に連れられロープウェイで
木曽駒ケ岳の千畳敷に登りました。当地の中学校では2年生になると
全員で木曽駒の頂上に登る習慣だそうで、その日も中学生の長い列に出会いました。

ロープウェイを降りカールのお花畑に入ります。
氷河跡は足元が悪く私は付いていくのが精一杯、
周りを見る余裕がありません。霧も立ちこめ足元の
花を見ながらもたもたと付いていきます。
木曽育ちの友人はすいすい身軽く、これはチングルマ、
シナノキンバイ、カラマツソウと指差し「これこれイワカガミよ」と
つぎつぎ教えてくれます。
そうこうしているうちにサーっと霧が晴れ花々が一度に
目に入ってきました。

さまざまの花が斜面に貼りつくように可憐に花を咲かせ、
種を守る健気さに溢れていて登山者の気持ちを清々しく洗ってくれます。
そんな景色にわが身を浸す幸せなひとときでした。
あかときの鉄条網や蝉生まる
杉本奈津子
夏の朝、散歩の時の事だった。
あたりはまだ薄暗く谷戸の小道には近在の人が
植えたらしい花々が可憐な蕾を付けていた。
太陽が顔を出すまでは花弁を閉じている花も
多いのだ。
細長い花壇の反対側は青い稲田で畔にはカルガモの
頭がちらっと見えていた。稲田の隣は少し小高くなっており栗の畑が
壊れかかった鉄条網に囲まれていて
小さな青い毬栗も既に葉陰に有ったように思う。

太陽がそろりと上りあたりを金色の光が包み始めた時、
錆びた鉄条網にも一条の光が差して小さな緑の塊が見えた。
かすかに動いているようだった。
眼を凝らすと何とそんなところで蝉の羽化が
始まっていたのだ。
緑に見えたのは蝉の羽だった。ゆっくり、ゆっくり
羽は薄緑に広がっていった。
短い蝉の命の誕生に立ち会った。
じいんとする光景だった。
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