悠歩さんが、先輩直子さんの俳句と、作句姿勢を書いています。

☆ 都市の一句 ☆(41)

       梅雨曇羽音いちづの恋孔雀       石黒直子(2015年10月号)    

                                         原 悠歩

 吟行が苦手と言うと、すぐに直子さんからお誘いがあった。
こうして町田の句会前に厚木で途中下車し
防災の丘公園へ二人吟行となった。

 紙切れに梔子などと見かけた花の名を、そして霧の中に大山が
ぼんやりと大きく浮かんでいた様子などメモしただけの私。
直子さんはと見れば孔雀舎の周りをいったりきたり、
時にはフェンスに張り付いてじっと動かない。すごい粘りようだ。
時間が気になり何度か声をかけてみたが直子さんは
じっと観察に余念がない様子だった。

 掲句はていねいに写生したうえ着眼が確か、
孔雀に一歩二歩と心を寄せて詠んでいる。
羽音いちづのとしたことで孔雀の様子がしっかり
見えてくるようだ。「恋孔雀」もなかなか言えそうで言えない、
中七からのおさまりも良く詩情がある。

 私は一緒にこの孔雀を見たものの、ただぽつんと孔雀だけが
飼われている不思議さとかなり高く飛べることが分かっただけで
句にできるとは思えなかった。俳句はまず写生、
「ゆっくり、よく見て、そしてその先、その向こう側を詠む」ことが
大切だということを教えられ、そして忘れなれない一句となった。

 直子さんはこのように写生の句が多く、実感、実景を詠んで力強い。
そして景色や歴史を立体的に、時間的な奥行きや地名を詠んで
美しく楽しい。
      
     目の玉の焦げるが如く酷暑かな
       
     洞窟へ斜めの日差虎落笛
       
     桑解くや風吹き頻る筑後川
       
     粒潮の引き戸に残る野分かな
       
     跳鯊の潮騒を聴く大目玉
        
     千年のいてふ散り敷く夕あかり
        
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     大根のしぶきに面ぬぐひけり

     うかつにも鯵のぜいごに刺されけり

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     笑はしてけふは手術日男梅雨
        
     風呂長き十五のこころ青薄

 
 また料理や家族の句もあり、これらの句から日々の暮らしを
なおざりにしない真っ直ぐな直子さんが見えてくる。


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