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時彦俳句を鎌倉の風景とともにちひろさんが、読み解きます。

2018/ 03/ 05
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        草間時彦1句鑑賞                  
                           鈴木ちひろ

  鎌倉や松の手入れを谷戸の音

              
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鎌倉は三方を山に囲まれ、一方をゆるやかに由比ヶ浜の海に
開いた地形である。
谷戸が多く山際まで住宅が広がっている。

駅前や八幡宮付近の喧騒から離れて住宅地に入ると
一転してゆったりとした静けさに包まれる。
竹垣をめぐらしたような閑静な佇まいの家々。
背後には山や林が迫っている。

谷戸の道は行き止りが多く、人通りが少ない。
道の奥には、今はフェンスに閉ざされ、雑草に覆われた切通しが
ひっそりと残っている所もある。

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 さて掲出句である。

よく晴れた秋の日。 静かな谷戸の道を行くと
どこの家からか、松の手入れをするリズミカルな鋏の音が聞こえてきた。
梢をかすかに揺らす風と、時折聞こえる鳥の声。
丁寧な鋏の音は、小気味よく秋の澄んだ空気に響き
鎌倉育ちの作者は、足を止めて懐かしくその音に聞き入ったのだろう。
いかにも鎌倉らしい、静謐な趣の一句である。

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草間時彦は、少年時代、扇谷の谷戸の家から
八幡宮の隣りの横浜国立大学附属小学校に通った。
子供の足には少々遠く、帰り道にはいつも
源氏池のほとりで遊びながら帰ったそうだ。
少年時代を過ごした鎌倉を、時彦は終生愛し続けた。

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