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直子さんが、純さんの句を読み解きます。

             都市の1句(43)

                              石黒直子

 
純さんの作品に出合ったのはつい最近、はじめは随分上手な方が都市に入ってこられたという印象でした。
そのうち何度か句会をご一緒して、俳句の道を究められた方という感じを持ったのです。

     うしろ手に障子をしめて春灯
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うしろ手に閉めた障子、何かわくわく心弾む思いが伝わるのは、春灯という季語から
艶な感じを受けるのです。季語の持つ明るさ、華やぎなど濃艶な時間が過ぎたことでしょう。

        追伸のやうに夕暮れの白蝶 

一日のおわり、夕暮れの白蝶とは。それは日暮れを惜しむかのように白蝶が現れた。
その日の大切なことが、白蝶の現れで再び深く心に残る一日であった。白蝶に詩情があります。
主宰は折にふれ「俳句は詩です」と言われている。夕暮れの白蝶に感動しました。

        蛇の目の少女のやうな目をしたる
 
この蛇は艶やかで少し小さかったのかも知れません。その目はキラキラ輝き、無垢の目に
作者は感動したのでしょう。純さんの柔軟な心がとらえた一コマ。

        さびしさとは書かず卯月の雨と書く                                      
 
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卯月の雨とは陰暦四月に降る雨、菜の花腐しの頃でしょうか、しとしと降る五月の長雨は心まで
濡れてしまいそうで、寂しさを誘う。それを「卯月の雨」と書かれた。作者はそっと季語を差し出した。
そこはかと感じる憂いを、作者の気持ちを、言葉で表しておられます。そして多くを語らず、
読み手にゆだねられている、俳句のお手本と思いました。人生の深さを感じました。

 純さんの句はじっと読んでいると、奥が深く滲み出てくるものがあります。
「言いさして」後は読み手に任せる。純さんの作品は色々想像ができ味わう楽しみがあるのです。
歳月を重ねてこられた方の豊穣を感じます。きっと時を経て読めば、また違った感慨を持つかも知れません。
ありがとうございました。
            


    

 
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レオフェイ
Posted byレオフェイ

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