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今回も関山さんが、主宰の句を読み解いてくださいました!!
2018/ 06/ 22中西夕紀の句鑑賞 「都市」六月号より
関山恵一(春野・丘の風 所属)

涅槃図の中に潜める絵師の顔
ほとんどの寺院に掲げられている涅槃図。
涅槃図には多くの菩薩や弟子、善男善女、動物などが描かれているが、
数多くの涅槃図の中にはもしかしたらそれを描いた絵氏が
ひそかに自分の顔を入れているのもあるかもしれない。
この句の作者の想像か、あるいはそうした涅槃図を実際に見たのかもしれない。
非常に面白い着想だと思います。
紅梅に廃寺は墓を残しけり
廃寺は廃止された仏教寺院であるが、跡形もなくなっているもの、
無住寺となってなお存続している寺もある。いずれにしても、
仏教活動はされていないが、墓だけは残っている。供養する僧はいないが、
墓の所有者はしかるべき日には供花を持ってい浮くのであろう。
ぽつりと供花のある墓の横には紅梅が咲いている。
さりげない景に無常を感じる作者のやさしさ。

鎌倉の砂付いて来し干若布
鎌倉には材木座をはじめとして、五つの海岸がある。
そこでは春先に若布を採り、湯がいて浜に干し、風に当てる。
地元で買ってきた若布に少し砂がついている。風にあおられた砂が
ついていたのであろう。春先の鎌倉の海岸に並ぶ干し若布の景が浮かんで、
若布の香りまで匂ってくる。

九体仏おはす明りや春障子
京都の浄瑠璃寺の九体仏が有名であるが、東京在住の作者は世田谷奥沢の
九品仏浄真寺であろう。三つの堂にそれぞれ三体ずつ安置されている。
ここには三十三観音、閻魔、奪衣婆、六地蔵があり見どころが沢山ある。
作者が訪れた九体の納められたお堂に灯が点り、それが春障子に透けて見えたのでしょう。
春の優雅なひと時。 〈これは浄瑠璃寺で作った句です。作者註〉
切株に座れば斜め鳥帰る
山を散策すると、間引きするために切られた大きな木の切り株に出会う。
ちょっとした斜面の切り株はたいていやや斜めに切られている。
一休みのため座った切り株もやや斜めであったのでしょう。
一息ついて風の音、鳥の声に耳を傾けていると木々の間の空に
北に帰ってゆく鳥が見える。一抹のさびしさを感じる句です。
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