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俳句でおしゃべり-都市ー

「都市」での活動や俳句に繋がる文章や会員のエッセイ等の語り場にしていきたいと思います。

Top Page › その他 › 林火の1句
2018-10-12 (Fri) 00:13

林火の1句

              林火一句鑑賞                   
                            大木満里

       路次ふかく英靈還り冬の霧

昭和13年作。
昭和12年、日中戦争が始まった。13年には「国家総動員法」
前書きに、「教へ子の英靈つぎつぎ還る」、とある。
重く、深い哀しみにみちた実景の句である。

                 空


神奈川県立商工実習学校の教師として、戦地から還る白木の箱を、
見つめている作者。
白木の箱を覆う、「冬の霧」は、重く、冷たい。
路次(道筋)の奥深く、つつましく生きる、戦死した若者の家族の、
声に出してはならない、声にならない慟哭さえも、胸に響いてくる。
それは、作者の哀しみでもある。
しっかりとした定型でできているのは、哀しみを胸におさめようと
しているかのように思えてくる。

かつて「本買へば表紙が匂ふ雪の暮」(大正15年)と、
若き日の溢れる感性を詠った林火である。
そこには、青年のもつ希望とロマンチシズムががあった。
林火の自宅には、多くの学生が集ったという。

                     電線

                          
戦死した若者は、在学中に、林火と文学について語ったことが
あったかもしれない。
あるいは、俳句を作ったことがあったかもしれない。
あるいは、𠮟責をうけたことがあったかもしれない。
必死に勉強をしていたかもしれない。
かっての林火のように、友人と授業をエスケイプしていたかもしれない。
笑い、泣き、怒り、思索し、希望はこれからだったはずである。
この「冬の霧」は、さらに深く重く、泥沼化していく。
林火の、人間として教師としての誠実さが、滲み出ている句である。
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最終更新日 : 2018-10-16

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