都市10月号に関山恵一氏(春野)と山中多美子氏(晨.円座)が、感想をお寄せくださっています。
2020年10月25日 公開
「都市」十月号主宰作品を読む 関山恵一(春野・三田丘の会)
草涼しむすびの海苔の匂ひたち

「草涼し」の季語によって真夏の暑さを避けて野原の木陰で
昼食のおにぎりを食べている姿が浮かぶ。今年の暑さは「命にかかわる」
と言われるほどの暑さが続き、高原に吹くやや涼しい風に
おにぎりの海苔の匂いに嬉しさを感じてぃるのであろう。
幽谷のしづけさ木々に黒揚羽
山深いところの渓谷、全く静かで渓を流れる瀬音に暑さを忘れるひと時、
音なく木々に舞う黒揚羽蝶に心洗われる。感性豊かな作者の頭には
また新しい詩が浮かんでいるにちがいない。
箱庭の家に隣家を作り遺る
箱庭は室町時代の茶室で作られ盆景といい、これを眺めて涼味を味わった。
作者も箱庭を作り、出来上がった箱庭の一軒家に何んとなく寂しさを覚え、
隣にもう一軒作った。「もう寂しくないでしょ、お隣と仲良くしてね」
という作者のやさしさが嬉しい句である。
玉虫の脚畳みをり祈りをり
玉虫は美しい、私が採ってきた玉虫を祖母が箪笥の引き出しの中に入れ
「こうすると着物が増えるの」と言っていたのを思い出す。
「脚畳みをり」とあるので、何処からから翔んできた玉虫が
木の枝でなく、草の上に降りその脚を畳んだのであろう。
その美しい姿が祈っているように感じた作者のやさしさが感じられる。
もろこしの湯気母が呼ぶ祖母が呼ぶ

作者の若い頃の思い出であろう。庭で茹でているトウモロコシがそろそろゆで上がって
たくさんの湯気を噴き出している。トウモロコシの好きな作者をお母さんが、
おばあちゃんが「ほら、そろそろ茹で上がりますよ」と声をかけてくれる。
幼い頃の作者に対する母の、祖母の愛情が詠まれていて心温まる。
朱雀集、青桐集、都市集より好きな作品 山中多美子
(晨・円座 同人 宇佐美魚目の弟子)
水の上のかげ渉りゆく梅雨の蝶 城中 良
向日葵の面をぐいと起こしけり 吉川わる
おほかたは葉に隠れたる花かぼちや 井手あやし

サングラス一日胸に下げしまま 砂金 明
浜祭り貝がらぼねのよく動く 石黒和子
糸瓜咲く雨の水輪は巴なし 北杜 青
てんと虫画帳抱へてをんな来る 樋口 冬青
強風に煽られ蝶々窓を打つ 今村はるか
蕗摘んで炊きまた摘んで家籠 岩原真咲
草涼しむすびの海苔の匂ひたち

「草涼し」の季語によって真夏の暑さを避けて野原の木陰で
昼食のおにぎりを食べている姿が浮かぶ。今年の暑さは「命にかかわる」
と言われるほどの暑さが続き、高原に吹くやや涼しい風に
おにぎりの海苔の匂いに嬉しさを感じてぃるのであろう。
幽谷のしづけさ木々に黒揚羽
山深いところの渓谷、全く静かで渓を流れる瀬音に暑さを忘れるひと時、
音なく木々に舞う黒揚羽蝶に心洗われる。感性豊かな作者の頭には
また新しい詩が浮かんでいるにちがいない。
箱庭の家に隣家を作り遺る
箱庭は室町時代の茶室で作られ盆景といい、これを眺めて涼味を味わった。
作者も箱庭を作り、出来上がった箱庭の一軒家に何んとなく寂しさを覚え、
隣にもう一軒作った。「もう寂しくないでしょ、お隣と仲良くしてね」
という作者のやさしさが嬉しい句である。
玉虫の脚畳みをり祈りをり
玉虫は美しい、私が採ってきた玉虫を祖母が箪笥の引き出しの中に入れ
「こうすると着物が増えるの」と言っていたのを思い出す。
「脚畳みをり」とあるので、何処からから翔んできた玉虫が
木の枝でなく、草の上に降りその脚を畳んだのであろう。
その美しい姿が祈っているように感じた作者のやさしさが感じられる。
もろこしの湯気母が呼ぶ祖母が呼ぶ

作者の若い頃の思い出であろう。庭で茹でているトウモロコシがそろそろゆで上がって
たくさんの湯気を噴き出している。トウモロコシの好きな作者をお母さんが、
おばあちゃんが「ほら、そろそろ茹で上がりますよ」と声をかけてくれる。
幼い頃の作者に対する母の、祖母の愛情が詠まれていて心温まる。
朱雀集、青桐集、都市集より好きな作品 山中多美子
(晨・円座 同人 宇佐美魚目の弟子)
水の上のかげ渉りゆく梅雨の蝶 城中 良
向日葵の面をぐいと起こしけり 吉川わる
おほかたは葉に隠れたる花かぼちや 井手あやし

サングラス一日胸に下げしまま 砂金 明
浜祭り貝がらぼねのよく動く 石黒和子
糸瓜咲く雨の水輪は巴なし 北杜 青
てんと虫画帳抱へてをんな来る 樋口 冬青
強風に煽られ蝶々窓を打つ 今村はるか
蕗摘んで炊きまた摘んで家籠 岩原真咲
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