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都市の1句です。稚さんの人柄も伝わります。

2021/ 03/ 30
                 
   都市の1句 (53)    平澤ひなこ

     子の向けば亡夫(つま)居るごとし秋の虹    林 稚

「子の向けば」は呼びかけると「何」と振り向いた子か?
「母さん」と呼びかけるため振り向いたのか?
成人した子の声や表情や仕草のすべてが、亡夫に酷似していたのだ。
思わず「お父さん」と呼んでしまいそうになって、一瞬、亡夫との
思い出が走馬灯のように浮かんだのだ。
季語の「秋の虹」のはかない美しさが、ぴったりの幻想的な句である。


鳩


 稚さんとは、あゆみ句会からざぼん句会と五年余り句会を
共にしている。稚さんは自分の時間をボランティア活動や習い事に
いそしみ、超多忙な日々を送っているため、月一回の句会と吟行の折に
言葉を交わす位である。
だから、句を通して人となりを想像している。

 この句は、稚さんの多くの「夫恋い」の句の中では青春というか
甘く切ない。他の句では感傷に浸るばかりでなく、気質なのだろう、
骨太でたくましいところがある。「どっこい生きている」感じである。
足を地に着けて確実に前進している。初心者の歩み句会から、
スッテップアップを目指して、早くにざぼん句会に入会した程
やる気のある人である。そんな稚さんには、「夫恋い」以外の句も
感性豊かで、楽しい句が多くある。

                                     夫婦


 稚さんの「夫恋い」の句は、句会に出される度に、その若々しい
感性が読者の心をぎゅっとつかむ。自分をしっかりと中心に据え、
心の中で夫を感じる日常を「生きている」のだ。
今、「夫恋い」の句集を編んでもらえたら、きっと癒されるだろうなあ。
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