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都市の俳句

   都市の1句 (57)      宮本川野     
     
   梳る水にたゆたふ花藻かな    井手あやし

この句は、旅の記憶を呼び覚ましてくれた。
それは、静岡県三島市と富士宮市の水に纏わることである。
水の都と言われる三島市は、いくつかの湧水地から湧き出す水が
川となり、市内を巡っていて、清らかな水は水量豊かに
市街地の水路を流れていた。
富士宮の富士山本宮浅間大社の湧玉池から湧出した水は、
水量、水流ともにただならぬ迫力を持っていた。
どちらも富士山の噴火によって作られた地層を通って
湧き出す水が源ということである。

見ず


それらの記憶が、「梳る」の一語によって次々と思い起こされた。
確かに、ふっくらと豊かな
髪を梳くかのように流れる水の勢いだったのだ。
句は「水にたゆたふ花藻かな」と続き、水中の植物に焦点が絞られていく。
きれいな水が育む生きものの命を讃える深みのある句である。

平易でありながら的確なことばを使われるあやしさんには、
農作業や田園風景を詠まれた句がよく登場し、楽しみに読ませて頂いている。
私がそういう風景が好きであることと、あやしさんの多方面からの
観察により、作業の動作や季節の変化なども伝わってくるからだろう。
じっくりと見たものを詠まれているのだなと思うのは掲句と同じである。

田


鬱陶しい梅雨の最中であるが、読みの流れもすっきりとしたこの句で、
ひととき清々しい気分を味わってみるのは如何だろうか。
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レオフェイ
Posted byレオフェイ

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