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都市の1句、今回は「かなぶん」の句です。

2022/ 04/ 10
                 
          都市の1句 (62)           樋口冬青

    飛んで来て秋のかなぶん土を掘る        加瀬みづき

                       (『都市』2020年12月号「都市集」より)

 
 息子たちが小学生の頃、今はマンションが並ぶ辺りは、まだ雑木林が残っていて
恰好の遊び場だった。かなぶんもいい遊び相手だったようで、糸をつけて
飛ばしてみたり、虫かごに飼ってみたり、ふとあの頃を思い出した。

                           緑
                         

 歳時記で「かなぶん」の項を見ると夏季で『コウチュウ目コガネムシ科の総称』とある。
しかも『日本では360種ほどが知られ(後略)』とあり、黄金虫の仲間はみんな「かなぶん」と
思ってもいいらしい。「♪金持ちだ」と唄われている黄金虫と同類だったんだ。
それならもっと大事にしてやったのに。と、どうでもいいことを思った。

 それはさておき、かなぶんは当然秋にもまだ飛び
回ている。子供相手に生き残った秋のかなぶんも、
まだ元気いっぱいの様子だ。

 先の歳時記によると、壁や窓によくぶつかったり、
時には死んだふりなどするらしい。また、幼虫は土の中で作物や樹木の根を食べる
害虫でジムシ、ネキリムシなどと呼ばれる、とある。みづきさんの見つけた
かなぶんは土を掘っていたという。卵を土の中に産み付ける準備でも始めるのだろうか。
なぜ土を掘っていたのか、かなぶんに聞いてみたいものだが、楽しそうに見ている作者が窺える。

 五七五のリズムの良さと、小さな生き物に対する作者の目がやさしい所為だろうか、
一読してほんわか楽しい気分になる句だ。
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