良さんの作品はフィクッションか、ノンフィクッション分からなくなります。はてさて、このお話は、、
2010/08/24 夏の月 城中 良
「暑い、我慢ならん泳ぎに行こう」と誰かが叫んだ。
高校生になって初めての夏の夜のことです。
遊びにも、話にも飽き、あまりの暑さに、
川に泳ぎに行くことになったのです。
夜の空には満月がひかり、道は明るく、田んぼ道でも
不自由なく歩け、遠くの隣の村の
こんもりした林が光って見えます。
川は阿賀野川から真っ直ぐ引いた農業用水路で、
幅3~4メートル。水がきれいで、大人も
子供も夏、ここでよく泳いでいたのです。
この川、鉄道と交差しており、線路の下は川の暗渠に
なっており、この暗渠の流れに人が吸い込まれ、
亡くなったと、実しやかに伝わり、恐れられた川なのです
土手に服を脱ぎ捨て、川に入る。夜の川は快適で、
汗に濡れた身体を川の流れが洗っていきます。
平泳ぎから背泳ぎになって夜空を見上げると
真ん丸の満月が真上にあり、川の流れに身をまかせて、
その月をみていると、突然、、何故か、
耳にバッハの無伴奏のチェロが鳴り出したのです。
水に浮く浮揚感と月の美しさの高揚感にチェロの音が
揺蕩うように耳に響いてくる。満月を見ながら、
恍惚として、下流に流されてゆく、とんでもない
危険な時間がながれてゆく。
どの位の時間だったか、全く思い出せない。
遠くで何かを叫ぶ声、慌しく走る足音、あれ、誰かが
呼んいる、その時やっと我に返ったのです。
かなり暗渠の危険なところまで流されていたのです。
「馬鹿野郎どうする気だ!」
大声の怒声がとんできた。何も言えず、川から這い上がり、
無言で土手を歩き出す。
みんなの怒りの後姿の背中から
月にひかる水がぽたぽた流れおちる。
互いに無言のまま土手伝いに服を抱えて、
川を後にしたのです。
夏の月肺壊えつゝも眠るなる
石橋 秀野
コメント