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都市の1句を秀岳さんが書いてくれました。

2023/ 01/ 15
                 
都市の一句 (67) 落合秀岳

               君植し庭の鉄線生き返り     長谷川 積 
  紫


この一句にハッとしてしまった。そして少し羨ましくなった。
積さんは、先立たれた奥様が自宅の庭に植えた『鉄線の花』を奥様の分身のように大切に育てていた。
それにもかかわらず、年を経るにつれ徐々に元気がなくなり、ついに枯れる寸前になってしまった。
その萎れた『鉄線』が奇跡的に蘇り、美しい花を咲かせたのだ。

掲句から、生き返った『鉄線の花』を目にした時の積さんの感動と喜びが、読み手に率直に伝わって来る。
同時に、奥様との思い出を大切にしている作者の気持ちが、とても優しく美しく感じられる。
特に、下五の「生き返り」に奥様が鉄線の花に姿を変えて甦ったかのような感動が
見事に表現されてをり、読者の魂を絞るものである。

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「ツル性の植物の女王」と呼ばれている鉄線の花言葉は「高潔」「美しい心」と言われている。
細いツルで沢山の花を支える様は、子供を温かく見守る母のイメージと重なる。
積さんの奥様も「鉄線の花」のように美しい心を持って、二人のお嬢様を愛情深く、
大切に育てられたことであろう。
 
積さんとは、中西先生主宰のざぼん句会で知り合った。
彼は、その人望と能力からざぼん句会の幹事に選ばれ運営を任せられた。
行き届いた指導やその姿勢は謙虚で、彼の感性豊かな俳句とともに尊敬している。
ざぼん句会で詠んだ亡き奥様の一連の俳句は、そのいずれも奥様への愛情の深さを感じさせるものだった。
  
              shima.jpg


中でもこの一句は、奥様の思い出と心のうねりが読者に素直に伝わってきて心を衝くのである。
これほどまで亡き妻への変わらぬ熱き思いを俳句に出来る積さんを羨ましく思った。
類まれな優しい眼差しを人にも自然にも向け続けた作者の心の温かさが、掲句に集約されてをり、
心に残った一句である。
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