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吟行に七夕様のように、年一回参加の心さんが、吟行記を書いて下さいました。
2011/ 07/ 24 かしの木山自然公園吟行記
栗山 心
正直、吟行が大の苦手である。
句帳片手に、大人数でゾロゾロと歩くのも
俳句をやっていない人なら通り過ぎてしまうものを
一生懸命覗きこんで、メモしていたりするのも恥ずかしい。
しかも、初めて出会った光景を、さも知っていたかのように
俳句に詠むのは、もっと照れくさい。結果、私の場合
出来た句はなにやら古めかしい、自分らしくない句ばかり。
元々、団体行動は苦手だし。と、そんな言い訳をしつつ
格闘場や繁華街で、携帯電話を句帳替わりに
「ひとりでこっそり」の吟行はやってきたものの
年に一度くらいは、勉強のため、と思い
「都市」の吟行当番をさせていただいている。
七月の吟行は、町田市成瀬の「かしの木山自然公園」
であった。
まずは当番の梢さんと共に、案を出し合う。
当初は、鎌倉市大船の大船観音や植物園を中心とした
かなり遠方の吟行地を予定していた。
大らかな大船の自然と、句会場は近代的なあーすぷらざ。
「都市」初めての吟行場所という点で、大いに期待した。
ところが、震災後、停電の心配もあり
近場の吟行地を探したのは、四月末のこと。
「町田駅や成瀬駅からバス」
「最悪、電車が止まっても皆さんが歩いて帰れる」
成瀬の「かしの木山自然公園」に決定した。
当日は、朝から暑くなりそうな陽気。
暑さ対策と虫除け対策は必須である。
18人の参加者は、町田組と現地組に分かれて集合した。
「かしの木山自然公園」は、4.8haのほぼ全域が林。
小学生が学校で自然観察に来るような場所であり
周りはありふれた住宅地。
良く言えば、「手付かずの自然」、何もないと言えば何もなく
実は会員の皆さんが納得して下さるのか、不安ではあった。

集合したメンバーは、公園の管理事務所を兼ねた
「森の家」に荷物を置き、三々五々園内へ。
この「森の家」の管理者の方には、大変親切にして頂き
帰り際には、良い俳句が出来たかと私の俳句の出来まで
心配して頂いて、大変恐縮した。
斜面になっている林を抜け、一番高台にある中央広場へ。
夏野ゆく吾は顎を上げてをり 明
木漏れ日やなつぐみの実の透きとほり 夏斗
「六角堂」と呼ばれる東屋の先からは
郊外らしくカラフルな色合いの家の屋根がぎっしりと。
更にその向うには、いつも句会をしている町田の高層ビルが見える。
銀林みのるの小説「鉄塔武蔵野線」のような
大きな鉄塔も硬質な美しさを添えている。

「南口」の出口付近は、「鎌倉古道」の跡であるらしい。
馬頭観音や古い墓地もあり、静かな雰囲気。
たまたまご一緒させて頂いた、地元の方の案内で
一度「かしの木山公園」の外に出て
「新田義貞が馬の鞍を掛けた松」があるという
「鞍掛の松公園」へ。
あまりに小さな松に驚いたが、この坂のあたりは
道のカーブなどに、色濃く古道の面影を残していて
しばし歴史に思いを馳せた。
再び園内へ戻り、目にも鮮やかな竹林を抜け
谷戸の地形となっている湿地へ。
「トンボ池」というらしく、ちらほらとトンボの姿も。
このあたりまで来ると、園内一周コースもそろそろ終わり。
「森の家」を目指す人、植物に付いたプレートで
名前を確かめながら、句帳を広げる人
日陰で考えをまとめる人、様々であった。
池の面の一条の葉や糸蜻蛉 満里
初蜻蛉水面に高く草に疾く 梢
初めての場所は、情報量が多すぎて処理しきれないし
日頃使いなれない季語にアップアップした。
司会や当番でバタバタとしていたので
句の出来は二の次、と思いもした。
かつてどこかの本で読んだのか
「吟行は句材を見つける場」であり
上手く作ろうなんて思わなくて良い、と。
確かに、「情報量が多すぎる」ということは
それだけ「句材があった」ということだ。
吟行が苦手なりに、得るものは多く
使える季語が増えたことは確かであった。
遅まきながら、吟行の魅力に気付いたのかもしれない。
実は、一日掛けての吟行に、なかなか出られない
都市メンバーと共に、数人単位、ランチを挟んで
二、三時間のミニ吟行を考えている。
同じ場所にいても、見ているものが違う
と気付かされるのが、吟行の魅力の一つであるとすれば
少人数の強みで、フットワーク軽く、あちこち行ってみるのも
悪くないかな、と。
緑さすかんばせ吾に笑みたまふ 夕紀

栗山 心
正直、吟行が大の苦手である。
句帳片手に、大人数でゾロゾロと歩くのも
俳句をやっていない人なら通り過ぎてしまうものを
一生懸命覗きこんで、メモしていたりするのも恥ずかしい。
しかも、初めて出会った光景を、さも知っていたかのように
俳句に詠むのは、もっと照れくさい。結果、私の場合
出来た句はなにやら古めかしい、自分らしくない句ばかり。
元々、団体行動は苦手だし。と、そんな言い訳をしつつ
格闘場や繁華街で、携帯電話を句帳替わりに
「ひとりでこっそり」の吟行はやってきたものの
年に一度くらいは、勉強のため、と思い
「都市」の吟行当番をさせていただいている。
七月の吟行は、町田市成瀬の「かしの木山自然公園」
であった。
まずは当番の梢さんと共に、案を出し合う。
当初は、鎌倉市大船の大船観音や植物園を中心とした
かなり遠方の吟行地を予定していた。
大らかな大船の自然と、句会場は近代的なあーすぷらざ。
「都市」初めての吟行場所という点で、大いに期待した。
ところが、震災後、停電の心配もあり
近場の吟行地を探したのは、四月末のこと。
「町田駅や成瀬駅からバス」
「最悪、電車が止まっても皆さんが歩いて帰れる」
成瀬の「かしの木山自然公園」に決定した。
当日は、朝から暑くなりそうな陽気。
暑さ対策と虫除け対策は必須である。
18人の参加者は、町田組と現地組に分かれて集合した。
「かしの木山自然公園」は、4.8haのほぼ全域が林。
小学生が学校で自然観察に来るような場所であり
周りはありふれた住宅地。
良く言えば、「手付かずの自然」、何もないと言えば何もなく
実は会員の皆さんが納得して下さるのか、不安ではあった。

集合したメンバーは、公園の管理事務所を兼ねた
「森の家」に荷物を置き、三々五々園内へ。
この「森の家」の管理者の方には、大変親切にして頂き
帰り際には、良い俳句が出来たかと私の俳句の出来まで
心配して頂いて、大変恐縮した。
斜面になっている林を抜け、一番高台にある中央広場へ。
夏野ゆく吾は顎を上げてをり 明
木漏れ日やなつぐみの実の透きとほり 夏斗
「六角堂」と呼ばれる東屋の先からは
郊外らしくカラフルな色合いの家の屋根がぎっしりと。
更にその向うには、いつも句会をしている町田の高層ビルが見える。
銀林みのるの小説「鉄塔武蔵野線」のような
大きな鉄塔も硬質な美しさを添えている。

「南口」の出口付近は、「鎌倉古道」の跡であるらしい。
馬頭観音や古い墓地もあり、静かな雰囲気。
たまたまご一緒させて頂いた、地元の方の案内で
一度「かしの木山公園」の外に出て
「新田義貞が馬の鞍を掛けた松」があるという
「鞍掛の松公園」へ。
あまりに小さな松に驚いたが、この坂のあたりは
道のカーブなどに、色濃く古道の面影を残していて
しばし歴史に思いを馳せた。
再び園内へ戻り、目にも鮮やかな竹林を抜け
谷戸の地形となっている湿地へ。
「トンボ池」というらしく、ちらほらとトンボの姿も。
このあたりまで来ると、園内一周コースもそろそろ終わり。
「森の家」を目指す人、植物に付いたプレートで
名前を確かめながら、句帳を広げる人
日陰で考えをまとめる人、様々であった。
池の面の一条の葉や糸蜻蛉 満里
初蜻蛉水面に高く草に疾く 梢
初めての場所は、情報量が多すぎて処理しきれないし
日頃使いなれない季語にアップアップした。
司会や当番でバタバタとしていたので
句の出来は二の次、と思いもした。
かつてどこかの本で読んだのか
「吟行は句材を見つける場」であり
上手く作ろうなんて思わなくて良い、と。
確かに、「情報量が多すぎる」ということは
それだけ「句材があった」ということだ。
吟行が苦手なりに、得るものは多く
使える季語が増えたことは確かであった。
遅まきながら、吟行の魅力に気付いたのかもしれない。
実は、一日掛けての吟行に、なかなか出られない
都市メンバーと共に、数人単位、ランチを挟んで
二、三時間のミニ吟行を考えている。
同じ場所にいても、見ているものが違う
と気付かされるのが、吟行の魅力の一つであるとすれば
少人数の強みで、フットワーク軽く、あちこち行ってみるのも
悪くないかな、と。
緑さすかんばせ吾に笑みたまふ 夕紀

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