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お休みだった佐紀さん、エンジンがかかってきました!

2012/ 02/ 21
                 
    1泊吟行                 
 
               星野 佐紀



2日目の早朝5時すぎに目が覚める。

一旦目覚めると眠りにつけぬ習慣に陥っているから、
支度をして部屋を出る。

川沿いの道をゆっくりと歩く。
街灯は人家の並ぶ側のみに連なる。
水面に映る灯が揺れている。
去年もひとりで見た懐かしい色だ。

  春暁や川沿ひの灯の片側に      佐紀


橋に出合う度に中程まで渡り欄干から川を覗き込む。
漆黒の闇に堰を落ちる流れが真っ白だ。

         堰


辺りで目に見える動きは、その“白”のみ。
“白”の速さと轟きが闇の中の心に迫る。
暫く橋上に立ち尽くしていた。

空が明るくなり始める。
遠くの山並みのシルエットが浮き出る。
稜線上にかかる雲が気になる。
鴉が、やけに鳴きだし飛び立ってゆく。

   寒鴉雲すこしある夜明かな      佐紀

辺りの様子がはっきりとしてくる。
川には大小の岩や石が、ごろごろ。
その間を何か動くものがある。
1日のはじまりを仲睦まじく楽しんでいる鴨の番。

    明けてゆく湯の町の鴨動き出し    佐紀
 
       カモ


「わたしは ひとりだよ。」
鴨に向かってつぶやく。

夫が私に残した ひとりの時間をどのように
積み重ねていくか・・・。
「どこかで見ていてくれる。応援してくれている。」と
信じつつの毎日なのだ。

   you.jpg
         

朝日が眩しくなってきた。
ひとりで居るのが、なにか気恥ずかしく人通りのない道を
ホテルへと引き返した。

   川底の藻のあをあをと春北風      佐紀


IMG_8531水面
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